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鞍馬天狗 鞍馬の火祭のkuronoriのレビュー・感想・評価

鞍馬天狗 鞍馬の火祭(1951年製作の映画)
3.5
えー、アラカンの「鞍馬天狗」。

冒頭の馬の疾走映像の伴奏で流れる「天国と地獄」にはちょっとビックリしますが、「ローン・レンジャー」の「ウィリアム・テル序曲」の影響なのか???
それともサイレントの頃から馬の疾走の劇伴は「天国と地獄」と決まっていただけなのか???
因みに「ローン・レンジャー」よりも「鞍馬天狗」の方が作品としては古いみたいです。当時「ローン・レンジャー」は「アメリカ版鞍馬天狗」といわれていたとか…。

閑話休題。
美空ひばりを杉作役に迎えて、松竹で撮った三部作の2本目。
偽天狗出現編であります。

偽天狗は、黒川弥太郎が演じています。宗十郎頭巾の上にさらに般若の面を被って顔を隠しています。
本物の天狗は、アラカン工夫の後ろから髷が見えるように加工された宗十郎頭巾なのですが、偽天狗は普通の宗十郎頭巾です。
腕は互角という設定。しかし一作目のレビューにも書きましたが、黒川弥太郎は渋い二枚目。二人並ぶと嵐寛寿郎ちょっと負けております。

ヒロインは剣術師範の娘千春。演ずるは岸恵子。
私が知ってる彼女は、もうボブカットにサングラスでパリ在住の人でした。娘役は新鮮ですね。ちょっと舌足らずのような独特の言い回しがとてもいい。これって多分、いまの薬師丸ひろ子しか知らない人達が「翔んだカップル」観たときの感想と同じなんだろうなと思ったり。
天狗と偽天狗は共に千春の父の元で剣の修行をしたという設定らしいですね。

ひばりの杉作は、前にも言いましたようにスケジュールの関係か、冒頭すぐに天狗を探しに長州に旅立ちます。
弟分の新吉が千春のもとに残されるのですが、これが杉作に変わって大活躍。さらに驚きの美声で歌まで歌ってしまう。かつら五郎という人が演じているのですが、その後の別作で杉作役に昇格しているようです。

天狗の密偵、黒姫の吉兵衛は引き続き川田晴久が務めます。相変わらず歌いまくりです(笑)。

好敵手新選組ですが、近藤さんは何故か出てきません。率いるのは鬼の副長土方歳三です。子供だろうと容赦しません。新ちゃんが恩人の話をしてもダメ(笑)。

今回マクガフィンとなるのは、三條実美卿が起草した「徳川打倒方針書」なる連判状付の書類。これを巡って高田浩吉の白河卿に誤解されてしまった倉田さんは、尽くせど尽くせど白河卿から罵声を浴びせられます。

本作の殺陣の見どころは、
般若の面から能楽の宗家をたどっていった先の、能舞台上で繰り広げられる大立ち回り。
さらに火祭りを背景にした、偽天狗との最終決着です。
最後は、「駅馬車」や「ヴェラクルス」っぽい演出ですね。

映画全体で記憶に残るのは、終盤、仲間に裏切られ、愛する人に受け入れられず、全てを失って、秘めた本性があらわになっていく黒川弥太郎の哀れな姿でしょう。
前後に御都合主義的な展開があって受け入れられない人は多いでしょうが、私は、結構好きなシーンです。

(毎年10月22日は蔵馬の火祭りなんですね。今年もやるんだろうか?)
2件
  • ピッコロ

    美空ひばりさん出てるんですね。 女優の美空ひばりさん見たことないから、ちょっと興味あります! 新選組と戦うんですか? 鞍馬天狗って、ダークヒーローみたいな感じなんですかね?

  • kuronori

    ピッコロさん ダークヒーローでは無いです。正統派の正義の味方の代表みたいな人だと思いますよ。 幕末の話なので、 「勤皇派」 (徳川幕府を倒して天皇に政権を変換するべきだという派)と、 「佐幕派」 (徳川幕府を存続させようという派)が争っているわけです。 西郷隆盛や坂本龍馬、桂小五郎なんかは勤皇派。もちろん鞍馬天狗こと倉田典膳もそうです。 新選組や見廻組なんかは佐幕派ですね。 新選組から見れば、勤皇の志士達は、革命を叫ぶテロリスト的な輩ということになります。

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幼少の頃、TVの映画劇場の西部劇から、洋画にはまる。 ブルース・リーが来て、カンフー映画の洗礼をうける。 TV時代劇がきっかけで、時代小説経由で、映画時代劇にはまる。 レトロブームの影響で、クラシッ…

幼少の頃、TVの映画劇場の西部劇から、洋画にはまる。 ブルース・リーが来て、カンフー映画の洗礼をうける。 TV時代劇がきっかけで、時代小説経由で、映画時代劇にはまる。 レトロブームの影響で、クラシックムービーにはまる。 小説始まりで、ハードボイルドにはまる。 ロール・プレイング・ゲーム始まりの、「指輪物語」経由で、欧州時代劇にはまる。 たまたま寄席に入ってみて、落語にはまる。立川志の輔や春風亭昇太、柳家喬太郎が好き。 大人になって、180度方向転換が起こり「男はつらいよ」がメッチャ好きになる。 最近は「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」きっかけで、戦車に入門。 初めてミュージカルの舞台を鑑賞。劇団四季の「巴里のアメリカ人」を観たのがきっかけで、ミュージカルに入門。 ルビッチ・タッチとは何かを知りたくて、ルビッチに入門中。 ネオレアリズモとはなにかを知るために、デ・シーカにも入門中。