Torichock

ブラック・スキャンダルのTorichockのレビュー・感想・評価

ブラック・スキャンダル(2015年製作の映画)
4.2
「Black Mass/ブラック・スキャンダル」

やったぜ、この野郎。
スコット・クーパー監督、きっと僕の肌に合う監督を見つけました。

前作「ファーナス/訣別の朝」でも最高に感じたが、スコット・クーパー監督のヒリヒリとするのような、話の通じない人間とのコミュニケーションと、じわじわと侵食する暴力の香りがたまらなく好き。

香り、匂い、僕にとってはとても大切な要素。

腐敗したシステムと、街にこびりつく正義と悪の境目がほぼない血族の匂い。
なんて、香ばしいんだろう。

どのショットを切り取っても感じるのは、南ボストンという街が狭く息苦しく見える。「ファーナス/訣別の朝」も、とても小さな街で起きた事件に見えたけど、本作も一見するとそう見える。世界的な犯罪者バルジャーという、ウサマ・ビン・ラディンに次ぐ懸賞金を懸けられた男には見えない作りになってる。

自分の利益のために人を殺すことを厭わない「凶悪」の先生&純ちゃんを1人で体現しているわりに、同時にどこか小物感も拭えない。
サスペンスに身を寄せるなら、もっと残酷残忍なキャラクターに寄せることもできたけど、本作の彼は、母の死を悲しみ、家族を心配するし、愛する子に思いを寄せる。
要するに、ちゃんと1人の悪を、1人の人間として描いてる。

それが中途半端と言われればそれまでだけど、僕的にはそれがたまらなかった。

歴史的な犯罪者も人間であるという感覚、そしてそんな人だからこそ、この人物が身近に感じるし、身近に感じるからこそ怖いから。

それは、ジョニー・デップっていうポップなイメージが強い人気者俳優が演じているからかもしれない。また、ジョニデの身長もちょうどいい。個人的には「スウィーニー・トッド〜悪魔の美容師〜」が好きだから、それ以降は、完全にダメ俳優というイメージが先行していたけど、今回は最高でした。

目で語る

を体現してくれてる感覚。
言葉の数で圧倒するよりもずっと怖いし、ずっと説得力があるし、ずっとそこにいる。

ジョエル・エドガートン演じるコノリーの小狡い感じも言わずもがな最高。
「アウトレイジ」の小日向文世のFBI版で、もっとセコイ感じがたまらない。
さすがに無理あるだろ〜!ってところで、ブチ切れ開き直り、でもその間に、事件の手がかりは闇の底に消えしまうという、ご都合主義もここまで来れば、悪が調子に乗るライド感に変わると思うんですが、この調子に乗りすぎず、内容は至って淡々に進む、大人な雰囲気も好印象。

またアメリカの個人主義を描写している世界観には憧れも感じる。
マフィアのボスと衆議院議員のビリーが兄弟でも、彼らにとっては兄弟ということは変わりないし、家族愛も変わりない。

最後の電話は、人を殺しまくった人間にもある、愛情をしっかり感じることができた。
(.だからこそ、怖いのだ)

カンバーバッチの出番は少ないけど、ジョエル・エドガートンとジョニデの極悪ブロマンス映画として観れば良いかと。

脇を固める俳優も、いろんなところでだいたいしょうもないことばっかりしてる役を演じている俳優というところが好感。

きわめつけは、おれたちの

ケヴィン・ベーコン

アメリカでは、ベーコンの匂いがするパンティが販売してるらしいぞ!!

とにもかくにも、僕にとっては悪の匂いと、ベーコンの匂いがする悪人映画。とても好きな作品です。


最後に追記。
ジュノー・テンプルにビッチやらせたら、右に出る者はいないですね。
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