くりふ

海街diaryのくりふのレビュー・感想・評価

海街diary(2015年製作の映画)
3.5
【極楽寺なあなあ日常】

面白いものが水面下に潜む感はあるのですが、そこに手が届かぬモヤモヤがずっと続きました。

忘れかけた父が亡くなる波紋が、三姉妹+1に広がり始まる物語ですが、まずこの波紋が曖昧…そもそも父親っていたの?と思うほどペラい。最後の妹を残してくれた、という感謝が結論めいていますがとーちゃん、種付けしただけみたいだ。

私は原作の一巻目だけ読んでいるのですが、三姉妹と出会ったすずが、父のある遺品を託すことで、三姉妹の心に父の生と死が浮かび返され、不思議なかたちでの喪の仕事となる…という冒頭がとても沁みました。

物語のけじめとしてもよかったので、ここをなあなあにした映画版は、始めに梯子を外された気分となり、それを最後まで引きずってしまった。だから冒頭と対応させた終盤の「別れ」も、あざとくペラく感じました。

四姉妹の画面映えは面白かった。全く姉妹に見えない(笑)。

綾瀬はるかは堅実にこなしていますが、顔が作り物みたい。長澤まさみと並ぶと際立つけど、皺がない!長澤はいるいるこんな軽ビッチ、という作り込みがよかった。吉田秋生が描く女の生臭さを一番体現していたと思います。夏帆ちゃんは薄味だけど、私には一番自然でした。すずちゃんはまだ堅いので今後に期待。

香田家の位置づけも面白かった。三姉妹はみな社会に出ているけれど、家は学生の女子寮みたい。で、皆おばあちゃんになっても一緒に住んでいるところが想像できてしまう。彼女らを囲む大人の影響もあろうけど(大竹しのぶの日本一の無責任女っぷりが見事!)、他者を弾いちゃうんですよね。

男子も禁制らしい。アフロ店長は侵入を許されますが、オスの匂いがしないからでは?それでも確か、縁側止まりだったかと。

何だかモラトリアムの砦みたいになっているところがうん、現代、で、『若草物語』などとは違うなあと思いました。

総体ではあまり感心できなかったのですが、もう一度みれば「手が届く」かもしれないので、いつか再見しようかとは思います。

細かい感想はまだあるのですが、このへんで。

以下、余談。

鎌倉、江ノ電、極楽寺駅…と来れば、私が真っ先に連想したのはドラマ『俺たちの朝』です。チューこと小倉一郎を登場させたのは、密かなオマージュでしょうか?
子どもの頃、影響されてプチ聖地巡りをしたら偶然、極楽寺駅で記念碑を建てるとかで、出演者が集まるイベントに遭遇したことも、懐かしく思い出しました。オッスがけっこう傲慢だった記憶が(笑)。

<2015.7.2記>
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