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狩人のodyssのレビュー・感想・評価

狩人(1977年製作の映画)
3.5
【あらゆる地の歴史】

アンゲロプロスがギリシアの近現代史を語ったとされる映画ですが、ギリシアの近現代史をほとんど知らない日本人がこの映画を見れば分かるようになる、というわけではありません。

いや、監督はもともとそういう映画を目指したわけではないでしょうし、そもそもアンゲロプロスの資質からしてそんな作品が作れるわけがないのです。

他のアンゲロプロス作品と同様に、この作品で重要なのは映像的なイメージです。過去と現在が交錯しながら、そして現実とフィクションが交錯しながら作品は展開されるわけですが、具体的な事件や人物を想起するというのではなく、いわば人類の歴史の象徴として、或いは古代ギリシア演劇の復活して、あくまで暗示的かつ象徴的に作品を楽しむべきなのです。雪、川辺、群れをなす人々、群れをなす舟、酒場での踊りなどなど、アンゲロプロスならではの映像がたっぷり盛り込まれています。

そう考えて鑑賞するなら、長尺もあまり気にならなくなりますし、最後近くでそれまで反体制勢力を抑圧してきた権力側が逆に反体制側からテロ行為で全滅させられる悪夢を見るシーンにしても、ある種普遍的な、どの地にでも、どの時代にでもあり得るお話として、堪能することができるでありましょう。
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