えんさん

バツイチは恋のはじまりのえんさんのレビュー・感想・評価

バツイチは恋のはじまり(2012年製作の映画)
1.5
良好な結婚生活を送るには、1回結婚を経験して別れ、その次に結婚した相手とうまくいくという経験説が伝わっている、ある一家の女性を巡る恋の物語。こういうジンクス的な要素は普通は個人でするものだけど、周り、特に近い家族での結婚経歴を見ると、全員がバツイチ後に幸せになっているとすれば、家系だと思って、意地になってバツイチになろうとするだろう。書類上でバツイチになろうとすれば、もっと簡単な手段はいくらでもありそうだが、本作はそこで一人の男の意中の人に意地でもなろうとする。そこから、この映画の暴走は始まるのだ。

劇映画は所詮フィクション(原作ものであろうとも)に過ぎないので、何をやっても自由だとは思うが、この映画ではあり得ないような設定を平気に持ち出すので逆に白けてしまうのだ。ネタバレになるので詳細は避けるが、ラストの教会で、いろんなものを持ち出すのはまぁまぁファンタジックっぽくあるのでありかな、、としても、途中でやれライオンだの、やれ脱毛クリームだの、そこまでやるのかという設定がいろいろ飛び出してくる。演じ手も必死にやっているのは分かるのだが、ちょっとありえないほどの手の入れようが、観ているこちらには演出過剰な気がして、物語に全然入り込めなかった。

それでも家族の回想劇という語り口は、(上記のありえない過剰演出は抜きにしても)お話の中にファンタジックな要素を入れ込むという構成にうまく仕立てられていると思う。私たちも「話半分」という言葉があるように、人の思い出話や、別人に対する噂話は、もとの実話に比べ、2倍3倍と過剰に盛られるもの。どうせそのような形を取るなら、とことんやりまくってラブ・ファンタジーのようにしてしまえば、もっと違う形のいい作品になっただろう。”バツイチ”という急に現実感のあるキーワードに縛られたから、そこまでもかっ飛ばせず、中途半端な立ち位置の作品になってしまったと思います。

ラブドラマとしては、フランス映画らしいオシャレな感じにつくってありますけどね。だからこそ、余計に残念な作品になっています。