きゅうげん

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のきゅうげんのレビュー・感想・評価

3.9
「丸顎でカッコ悪い」と揶揄されたバットマンことマイケル・キートン、「俺はちゃんと芝居をしたい」とMCUを降りたハルクことエドワード・ノートン。そんなラインナップに「ヒーロー映画のアンチテーゼかな」と斜に構えて観はじめました。


ところがそんな出演者、わけても劇中劇とそれを演じる役者の主人公、そして作品の枠を超えたマイケル・キートン自身の演技が素晴らしいです。情熱・摩耗・狂気のカオスのなかでまさしく「役者」を編み出しています。
エドワード・ノートンの腐りっぷりも良く、ふたりの間で振り回されイライラしてるエマ・ストーンも最高。
また何より長回しの(ような)カメラワークの魅力。とっても濃い追体験感を分かち合えます。それにくわえて時間経過表現の緻密さ。定番のタイムラプスはさることながら、花瓶が割れたり楽屋で暴れたり、映像表現として象徴的で上手な演出がさえます。

進むにつれてだんだん大きく重くなってゆくテーマ。
大衆映画と芸術映画との違い、娯楽性と文学性のの葛藤と両立、そんな相克のなか役者はどこへ向かうべきか……。そして芸術文化の時代とネット文化の時代とへの疑問も投げかけられています。NYとハリウッドの関係性やネット動画と芸術映画との関係性など現実問題から、簡単に有名になる現在/気がつくと忘れられてる過去という命題まで。
つまりやっぱり「スーパーリアリズム」なんです。