紅蓮亭血飛沫

パニック・トレインの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

パニック・トレイン(2013年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

うーむ…普通…。

暴走列車を引き起こした元凶は早々にフェードアウトするため、お咎めがない、更に言うなら顔も動機も不明…とモヤモヤさせられます。
一応劇中で「過去に同様の暴走列車事件があって、犯人は客もろとも自殺しようとした~」といった事例をキャラクターが紹介するため、一つの可能性を指し示してくれますが…。
結局真相は謎のままなので、犯人が何者なのか・どうなるか追及した人からすれば肩透かしですね。

その分、本作は列車に残された少数の乗客達が、この事態に対処する様を重点的に描いてくれます。
この異常事態の発端へと詳しく言及するのは、最初からあきらめている・考えていないのではないかと思われます。
そういった部分に尺・設定を込めるよりも、この状況に奮闘する登場人物達の掛け合い・行動に集中した意図を感じました。
では本作の登場人物達の掛け合い・行動はというと…自分の命が危ない状況ですから、みんな必死に自分が出来る事をやろうとするため、キビキビ動いてくれます。
医者である主人公は可能性がある最後まで負傷した老婆への蘇生法を試みますし、ヒロインは主人公の息子が不安な気持ちにならないよう常に隣にいたりと子守りの役割に徹しますし、ヤンという男は自分の経歴や手品を使って不安が膨らむ登場人物を和ませたり…。
それぞれの登場人物に個性を立たせるよう、あれこれ手を加えた感触があります。
身を挺してたくさんの活躍と自分の人生における経歴、家族への思い等を提唱してくれたためか、最終的に序盤の第一印象とは真逆と言っていいぐらいの善人として見えてしまうほどに見違えた人物が“ヤン”でしたね。
彼は本作におけるMVPといってもいいぐらいの存在感です。

良くも悪くもヤンが主人公を食ってしまう程に目立っていたため、ぶっちゃけてしまうとヤン以外の人物はそこまで印象に残りませんでした。
また、結局犯人の動機・素性が不明であったり、ところどころで思わせ振りに置かれた伏線じみた過程や現実味を帯びた対処(犯人と思われし人からインターホン越しに現在の乗客人数を聞かれた事、運転手・車掌に接触する必要性はないと呼びかける初老の男性、こんな非常事態に警察を含めたくさんの組織が必死にあれこれと救援を寄こさない等)がなかったといった事から、全体的にストーリーの完成度はそこまで高くありません。
暴走列車に取り残された人達による決死の生還…という作品をたくさん見てきたわけではありませんが、その題材に関しての最低限必要な箇所は固めるよう努力し、この状況に立ち向かう人間達の奮闘を重点的に、魅力的に描こうとするスタッフの痕跡を感じる事は出来ました。
…まぁ、これ見るぐらいならもっと有名どころの暴走列車映画、他の列車映画を見た方がいいですね。

P.S
医者という職業柄、この列車に乗って仕事を受けた病院へ向かおうとする主人公が、最終的にボロボロになりながらも生還。
その後にヤンから「これでようやく病院に行けるな」と二重の皮肉を聞かせるラストは地味に好きです。