MasaichiYaguchi

ジャングル・ブックのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ジャングル・ブック(2015年製作の映画)
3.8
1967年の同名ディズニーアニメーションを「アイアンマン」シリーズのジョン・ファブロー監督が実写映画化した本作は、主人公の少年以外は全てCGというのが信じられないくらいリアルな生命の躍動感に満ちている。
登場する動物たち、オオカミ、黒ヒョウ、クマ、トラ、サル等の表情や毛並、そして動き、舞台となったジャングルの木々や木洩れ日、そこを流れる川、風渡る草原、これらCGで作成されたものと少年モーグリ役のニール・セディが何ら違和感なく“共演”し、走り回り、よじ登り、飛び移っているのを観ると、一体どうやって撮影したのかと思ってしまう。
ただ本作の魅力は、このような映像の凄さだけではない。
アニメーション版もこの実写版もファミリームービーではあるが、前者が陽気でコミカル、シンプルな子供向けだったのに対し、本作は大人の鑑賞に堪えられるようなメッセージやテーマがある。
それはジャングルという“異世界”で自分の“居場所”を見出せるのかということ。
ある悲劇で親を失ったモーグリはオオカミの“コミニュティ”で育てられるが、彼が成長して得た知恵を発揮しようとしても、“コミュニティの掟”で封印されてしまう。
更には、彼を敵視し、排除しようとする絶対的な力を持つものもいて、彼は自分らしく生きられる場所を求めて彷徨うことになる。
彼のこの“心の旅”とも言えるものにはパートナーがいる。
そのパートナーは黒ヒョウのパギーとクマのバルー。
モーグリにとって彼らは師であり、大切な仲間でもあるが、両者は全くタイプが違う。
モーグリは様々な困難やピンチを彼らと共に乗り越えて逞しく成長していく。
果たしてモーグリはこの旅で自分の居場所を何処に見出すのか、そして避けては通れない“宿敵”にどう立ち向かっていくのか?
この映画はファンタジー物ではあるが、異なるものたちが集う社会での共存や、その中で如何に自分らしく生きるには、ということを我々に投げ掛けている。