たむ

新選組始末記のたむのレビュー・感想・評価

新選組始末記(1963年製作の映画)
3.5
新選組の実像を膨大な取材で書き上げた子母澤寛の原作を三隅研次監督、市川雷蔵さんの名コンビで描く時代劇です。
原作は小説ではなく、多くの隊士のエピソードをまとめたもので、本作は侍としての姿と新選組のやり方に葛藤する監察の山崎丞を主人公にしています。
山南敬助の心情も入っているような気がしますが、局中法度に暗殺に明け暮れる残忍な殺し方、やり方に苦悩し、恋にも悩む青春映画でもあります。
この青春映画色が他の新選組映画と一線を画する点でもあり、60年代新しい時代劇や新選組として現代的なアプローチでもあったのでしょう。
本作は新選組の黎明期なので、最後までは描かれません。
クライマックスの池田屋事変は凄まじい迫力で、それまでの様式的な殺陣ではなく、乱闘です。
殺し合いの恐ろしさが描かれており、実際に近い血生臭い戦闘が表現されています。
個人的には新選組映画の中でもかなり上の方にくる面白さで、史実と違う部分もなくはないですが、映画的な脚色、特に天知茂さん演じる土方歳三と雷蔵さんの山崎の葛藤は見応えがあります。
名コンビにはやはりハズレがないですね。
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