Violet

レヴェナント:蘇えりし者のVioletのネタバレレビュー・内容・結末

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

まずはレオ様!
アカデミー賞主演男優賞本当におめでとうございます~~
これは文句なしの主演男優賞だった..!
ぱっと見ただけではレオ様だってわからないほどに、
完全にレヴェナント、つまりグラスになってた..!
目の前で息子を殺され、復讐を誓い憤る姿は鳥肌立ちっぱなしで涙出てくるくらいだった。
あとは熊と激しい戦いを繰り広げるシーン。自然や野生動物の恐ろしさを映画でこんなに痛感したのは初めて。

映画の舞台は1823年のアメリカ北西部。白人入植者によるインディアンの征服戦争が大規模化していった時代。
言わずもがな激しい戦いや、目を覆いたくなるような残虐なシーンが多いけれど、
何よりも極寒地帯・白銀の息をのむような美しさと大自然の畏怖を存分に感じることが出来る映像に終始目を奪われた。
雪の白と血の赤という色彩のコントラストにより、争いの惨さがぐっと伝わってくる。

映画の製作スタッフの話によると、この映画は「自然光」の元での撮影(特にマジックアワーと呼ばれる1日1時間半程度の黄昏時の撮影)に徹底的にこだわっていたという。また、劇中に登場する砦のセットは「全方位どこを写しても自然に見える」ことを目指して制作され、撮影も時系列に沿って行われた。
このこだわり抜かれた撮影だったからこそ観る者を魅了する美しい映像が撮れたのだと思う..すごい...

この映画はグラスが息子であるホークを殺害したフィッツジェラルドに対して復讐を決意する物語であり、最終的にフィッツジェラルドはアリカラ族によって頭の皮を剥いで殺害され、グラスは生き延びる、というハッピーエンドの結末で幕を閉じる。

しかし、これは単なる復讐劇ではなく、「宗教」や「自然」といったテーマが大きく関係しているのである。

入植者の1人で、毛皮ハンターとしてバイソンを乱獲したグラスは、劇中大自然の中でクマに襲われて瀕死状態に陥っている。
その後も瀕死状態のグラスは自ら生きることを諦めようとするが、そのとたんに息子を殺され、自らも雪の中に生き埋めにされてしまう。
その後フィッツジェラルドへの復讐のために隊に戻ろうとするが、自然に行く手を阻まれうまく事が運ばない。
つまり、キリスト教的な罪を犯そうとしたとたんに災難に見舞われているのだ。

劇中では「breathe(呼吸する)」という単語が頻出する。
As long as you can still grab a breath, you fight. You breathe. Keep breathing.(息ができる限り戦える。息をして。息をし続けて。)
これは亡くなったグラスの妻の言葉として、グラスの耳に何度も呼び掛けてくる言葉であった。
この映画での息を止めることとはつまり、「信仰心を捨てること」でもある。

最後、グラスは復讐に燃える心の炎を静かに消し無になり、「No…Revenge is in God's hands. Not mine.(復讐は神の手に委ねる)」と言ってフィッツジェラルドを川に流した(ここで川に流しているのは、水が神を象徴しているから)。すると、キリスト教的な罪を諦め神に委ねた途端にフィッツジェラルドはアリカラ族によって殺され、グラスはアリカラ族の族長の娘であったポワカを救っていたために見逃され、生き延びられたのである。
もしもグラスが実際に自身の手で復讐を遂げてしまっていたら、彼は家族だけではなく信仰心まで失うことになっていたのだ。

また、フィッツジェラルドがグラスではなくインディアンであるアルカラ族によって命を奪われたという点からも白人に対する「復讐」を象徴していると言える。この物語の主人公であるグラスは英雄のように描かれているが、インディアンたちにとっては彼もまた悪魔のような存在である。
ラストシーンでインディアンの、そしてグラスの2者の復讐が果たされたこととなった。

本作は、「自然」という大きな舞台・そしてテーマをもとに1人の人間の復讐と信仰心を描いた作品である。映画の最後、グラスの妻が微笑むシーンでは、信仰心を守ったことによってグラスの復讐が果たされたことが語られているのだ。
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