尿道流れ者

さよなら歌舞伎町の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

さよなら歌舞伎町(2015年製作の映画)
2.0
年老いたベテランの監督ならではの空気の読めないズレた映画。家族団欒の場で急に説教したりしだすジジイのような、はたまた風俗嬢に説教するおっさんのような痛々しいズレ。

エンターテイメントとしての部分と監督の主張が全く噛み合ってなく、歪で恐怖感すら覚える不思議な映画。設定自体は面白いが、ラブホテルで繰り広げられる人情話と思いきや、それは全くの浅はかな観客の思い違いで、跳ねることのないグダグダな話。群像劇としての絡み合いも物足りないままで喜劇としても悲劇としても足りないまま終わってしまう。

無力な小さな主人公が絶望し去っていくという展開は凄く好きだが、闘って付いた傷はなく、ただただ無気力に傷を付けられるのみで感情移入のしようがない。
話とキャラクターの設定だけは良いが、それ以上の物を用意されてなかった役者が可哀想で、台詞は酷いし、それぞれがそれぞれのみの完結を迎えていくのみ。

特に許せないのは震災をただネタとして使う浅はかさ。問題提起には全くなってないし、主人公にとっての悲劇が起こる部屋番号が311なんてあまりにもふざけすぎだと思う。真剣に向き合っているわけでもなく、ただの脚色として使われる震災。こういう使い方をするバカな人間がいるから、監督の言う「風化」が起きるんじゃないの?こういった感覚的なズレが恐ろしくて唖然とした。

さらには、AV女優が立派な仕事みたいな台詞を登場人物に言わせてるけど正気かと?AVはそれ自体や映像内のシチュエーションなどの背徳感におかずとしての価値が出てくるわけで、立派で認められている物として存在するAVなんて抜けるかっ!本当に立派な仕事なら公務員の業務にAV制作があるわっ!いや、でもそれはそれで抜けるな。
ともかく年配のズレた価値観で語ったり演出するにはネタが悪すぎる。立派じゃないし、肩身が狭いものだからこそ価値を発揮するものがきちんとある世界なわけだから。

でも、イ・ウンヌの素股プレイが大画面で観れたことには感謝してるし、染谷君の駅弁もなかなか見応えがある腰振りだった。