爆裂BOX

セッション9の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

セッション9(2001年製作の映画)
3.8
廃墟となったダンバース精神病院のアスベスト除去を行うため、ゴードンら5人の男達がやってくる。作業を始める彼らだが、かつて患者が受けた虐待や狂気の痕跡に触れ、精神的に追い詰められていく…というストーリー。
「マシニスト」等を手掛けるブラッド・アンダーソン監督の初期のサイコ・スリラーです。
かつて非人道的な治療や実験が行われたダンバース精神病院。今は廃墟と化したこの施設が公共施設として改修されることになり、アスベスト除去のため5人の男がやって来た。通常3週間かかる作業を2週間で終わらせることになり、さっそく作業を始める彼らだが、廃墟に残る苦痛や恐怖の悪夢の痕跡が彼らを追い詰めていく、という内容です。
観る前は精神病院跡の廃墟を舞台にした心霊ホラーかと思いましたが、実際は精神的に追い詰められていく心理スリラーでしたね。なのでホラーというよりはサイコ・スリラーですね。
残酷な描写やジャンプスケア等はなく、思わせぶりな展開が終盤まで続くんですが、序盤からゴードンは家の前に止めた車から出迎える奥さんと赤ちゃん見ても全然うれしそうじゃなくストレス溜めてる様子で、右腕のフィルも仲間のハンクに恋人取られてたりと不協和音だしてて、それが不穏な空気感を生んでて、役者陣の演技と相まって飽きずに見ることが出来ました。
実際のダンバース精神病院でロケしてるのもあり、暗い歴史を持つ建物が放つ雰囲気も何も起きなくても物語に不穏な空気をもたらしてもいますね。廃墟好きな方もグッとくるんじゃないでしょうか。
リーダーのゴードンは仕事と家庭両方でストレス溜めこんで危うい感じ出してますし、右腕のフィルはハンクに恋人の事でからかわれてもちょっと言い返すぐらいで真剣に取り合わず仕事をこなす姿が大人な感じ出してますし、メンバーの中では一番真面目な感じのマイクにゴードンの甥で暗所恐怖症なジェフとほぼ5人しかいない登場人物のキャラも立ってたのも飽きなかった一因かな。ジョシュ・ルーカス演じるハンクは一番クソ野郎な感じで一番印象に残ったかな。
タイトルはマイクが発見する、多重人格で家族を殺した患者メアリーの治療記録のテープの事ですが、これ聞くのもマイク一人なんですよね。音声だけながらそれぞれの人格に合わせて声が変わる所や、医師がその居所を探ろうとしている「サイモン」という人格の存在がまた不穏で不気味な空気を盛り上げます。これが後半徐々に現在とリンクしてくる所も怖さ感じさせます。
壁の中から発見したコイン回収しようと夜中に廃墟に戻ったハンクが不気味な人影見たり、何かに追い詰められていく所も怖さ感じました。
終盤、飛んだと思ってたハンクが様子のおかしい状態で廃墟に現れた所からある人物の狂気が爆発して惨劇が引き起こされます。ここも、直接的な描写はないですが、とうとう爆弾が爆発したという感じを受けました。あの人は仕事が始まった段階からもう一線超えてたし狂気に堕ちてたんだな。まあ、この廃墟に漂う忌まわしい過去がもたらす空気も彼の狂気を増幅させるのに一役買ってたのは間違いないだろうけど。しかし甥っ子と最後にヘルプに来た人が可哀想だったな。
最後の音声も不気味な余韻と後味残します。誰の心にも「サイモン」が潜んでいて、心が限界を迎えた時に狂気に陥り一線を越える後押しをするんだろうな。
派手さはないですが、作品を覆う不穏な雰囲気や、精神的に追い詰められていく描写が怖さを感じさせるスリラーでした。