えくそしす島

聖者たちの食卓のえくそしす島のレビュー・感想・評価

聖者たちの食卓(2011年製作の映画)
3.9
【食とは】

本当のドキュメンタリー作品というものは存在しないのかも知れない。

このジャンルは脚色過多や題材の偏り、多面的にではなく一方向からの視点の作品も多い。
プロパガンダの手段としても採用されやすい上に、被写体もカメラを向けられたら意識するのは当然だ。

勿論、監督の思惑や誘導によってとんでもない作品が生まれる場合がある。
「ゆきゆきて、神軍」なんて最たる例。
今後の日本では二度と作れないと断言出来る程の怪作だ。

だが、今作は本当の意味でのドキュメンタリーに近い。

シク教徒にとって神聖な寺院であり総本山、ハリマンディル・サーヒブ(黄金寺院)。

まるでファンタジーの世界かと思うような荘厳な寺院。これだけでもずっと見ていられる。

インドと言えばターバン巻いて髭を生やしているイメージがあると思う。その人達がシク教徒だ。

そこでは毎日、約10万食の豆カレーを巡礼者や旅行者のために無料で提供している。世界最大の無料共同食堂だ。
ボランティアで運営され600年もの歴史を持つ。

訪れた人々全てが、公平に食事を食べることが出来るインドでは数少ない場所。

インドには階級(カースト制)がある。制度自体は撤廃されたが未だ根深い。
その為、本来ならば、階級、性別、宗教が違えば食事などの場を共有することはありえない。
階級が上の人の前で食事をしただけで殺される。
それが今だに起きているのが現状だ。

だが、黄金寺院ではマナー(頭をスカーフやバンダナ等で隠し、靴を脱ぎ、足を洗う等々)さえ守れば、宗教や国籍を問わず誰でも入ることができる。

すべての人々は平等であるという教義がある為だ。

材料の収穫から食事後までの日常を映している。BGMもナレーションも無い。
この光景が、24時間365日繰り広げられている。

この作品は観ているとひっじょーに眠くなる。それは退屈でつまらないからではない。

“心地良いから“

淡々と非日常かと思わされる様な日常と、ある種の音楽かのような環境音や生活音。

そのまま寝たって良い。それもまた映画の楽しみ方。

ちなみに、この監督は料理人でもある。観れば納得の視点だ。