えくそしす島

オオカミの家のえくそしす島のレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.8
【教化】

独創性あふれる異質で特異なホラー風アニメーション(ストップモーション)作品。その世界観は観るものを困惑させる。そうです。私も迷子です。

<異様で異質>
  <特異で奇異>
    <異相で異形>

監督・脚本
クリストバル・レオン
ホアキン・コシーニャ

あらすじ
チリ南部のドイツ人集落。その集落に、動物が大好きなマリアという娘が暮らしていた。
ある日、ブタを逃がしてしまった彼女は、罰に耐えられず脱走してしまう。逃げ込んだ家で出会ったのは、2匹の子ブタだった…。

まず大前提として
チリの独裁政権(ピノチェト)時に、元ナチス党員が立ち上げた“教団施設“を知らないとネタバレ以前に最初から最後まで意味不明のまま終わる。この狂気じみたマラソン大会のスタートラインにすら立てない。その施設の名は

「コロニア・ディグニダ」

よく映画の題材にもなっているので知っている方も多いはず。そして、知った上で視聴しても

"発想に追いつけない"

実際、私も「コロニア」が何かを知っていた。それでも、マラソンスタート直後から疲労骨折と急な便意を催すくらいには置いて行かれてしまった。まだだ、まだ止めるなよドクター。

恐らく影響を受けたダークでグロテスクなシュルレアリストの映像作家ヤン・ジュバンクマイエル。

その彼の作品が「分かりやすい」と思えるぐらい今回は戸惑ってしまった。理路整然とした「物語」は最初から期待していなかったのにも関わらず。

話なんてあってないようなものだから、面白いか、面白くないかでいったら面白くはない。でも、凄い。圧倒される。

この世界観に強制的に束縛されるような感覚と生き物のように“生えてくる"徹底した狂気的な造形美。

少しづつ描かれる家の中
少しづつ塗り足される色
少しづつ形作られる人形

その場で作られていく
  “作品たち"

制作過程を“省かずに"そのまま映像として流し続けると何が起こるのか。無尽蔵に出来上がっては消えていく。造形物の「創造と破壊」を繰り返していく。そんなループ。

そしてこのビジュアル。
ああ、きめえ。でも好き。でもやっぱりきめえ。なんか洗脳されそうでもある。のに好き好き♡

まるで
「多重夢」

悪夢を見ながらまた悪夢を見る。イヤーな夢を体現したような非言語表現。内容は覚えていないのに身体だけが覚えている“あの感覚"。

目を覚ました方が幸せなのか
目が覚めない方が幸せなのか