まる

沈黙ーサイレンスーのまるのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
5.0
こんなにも苦しいのに、なぜ信じる神は助けてくれないのか。
イエスは苦しみを長引かせるための処刑、十字架でなぜ神は私をお見捨てになるのですかと叫んだ。イエスでさえも。

新約聖書の主要な話(イエス殉教)を読むとわかりやすい。
聖書のオマージュというか、これがモチーフだなという箇所が非常に多いからだ。
なぜ人間は宗教にすがるのか。飢えた人に天からご飯を与えるでもなく金を与え裕福にしてくれるわけでもない神を信じるのか。
ユダ、キチジローに表される人間の弱さを罪として背負い、磔にされた神の子イエス。

アミニズム(自然に魂を見出す考え)が根付いた日本では、全く異なる唯一神のキリスト教は理解しづらい部分もある。
それでもキリスト教を受け入れ、迫害を受けても信じた隠れ切支丹達。なんでだろうか。

イエスの受難、悪魔の囁き、そして沈黙という題名の重さを節々に感じる。
信仰とは何か、何を持って信心とするかが問われる素晴らしい映画体験だった。
宗教は特に信じていないし、正月には神社に行き、クリスマスを祝い、寺でも手を合わせる人間だが、信仰を持つ人々と歴史を考えずにはいられない。音楽も俳優人の演技力も構成もテーマも、あまりに深く素晴らしく評価のしようがない。見ていて辛い内容が続くが、ラスト一瞬まで見てほしい映画。
まる

まる