さわら

沈黙ーサイレンスーのさわらのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.0
文学部日本文学科卒としては遠藤周作は避けては通れないし、というかむしろ好きだし愛してる。だからこそ、スコセッシの映画化には多少なりとも心配はあった。アメリカ人に大和魂が、江戸時代魂がわかるものかと(自分だってよくわからんが)。
といいつつ、なーんも違和感なかったしすごく原作に忠実だしで、周作愛を感じずにはいられなかった。ラストの改変もいいです。

この映画、未熟なロドリゴ・ガルペの表情が最高ですね。初めての日本での食事、粗末な魚にがっつく2人の目の前で、神に祈る日本人を見て、慌てるとこが可愛いです。未熟な司祭だからこそ引き起こした悲劇ともいえるので、日本人役者もいいですが、やはりアンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバーの2人の功績が大きい映画だったように思います。

原作の面白さは、ロドリゴとイノウエの緊迫感ある腹の探りあいにあったと思います。そして、みるみる信仰心を削がれていくイノウエの一挙一足にゾクゾクしたものです。
が、映画にはそれが著しく欠けていた気がする!“棄教”というこの映画の肝となるところ、大変ドラマチックで、そしてショッキングに描くべきシーンが上っ面のみの消化不良感がありました。その前のフェレイラとロドリゴの宗教問答が最高なだけに、緊張感そのままに盛り上げて欲しかったところです。
あと窪塚洋介のキチジローは最高だったのですが、イッセー尾形のイノウエさまが作り込み過ぎてる気がしました。言葉は明るく目の奥が冷たい浅野忠信のほうが、イノウエに近かった気がします。

と言いつつも、全体的には満足しています。冒頭だんだん大きくなる自然音から、一気に音が止み「Silence」と出るカッコよさ。日本人がやると、妙なダサさが出そうですがスコセッシがやると様になる。
そんな、ずるい男スコセッシ、バイオレンスでなくても安心できるムービーメーカーであることをここにまた証明しました。ごちそうさまでした。