Riisa24

沈黙ーサイレンスーのRiisa24のレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.3
この映画を見るとほとんどの人間が熱く語りたくなる若しくは表現しづらい感情が咽び上がってくると思う。
私には文庫で読む方がジワジワ締め付けられてくる感じが強くあった。

「今まで誰もしなかった最も辛い愛の行為をするのだ」「踏むだけでいい」と囁く幕府側の言葉は無神論者からするともっともな気がするが、身内を守るために棄教することは愛ではなく憐憫(憐れに思うこと)と遠藤周作は言っている。
そこで絵踏をする人を弱虫、信教を貫く人を強虫とすると、強虫は確かに強いけれど信念を曲げないためなら他人を傷付けるのもやむを得ないなどと利己的な節があるのに対して、弱虫は周囲を傷付けたくないから折れやすいのだとも言っている。

キチジローは象徴的な弱虫。
最も汚くて憐憫という感情に流され逞しく生き続ける人間。
それが良いか悪いかは置いといて、多くの殉教者などとはっきり対比していて興味深い人物だった。

幕府統制下の小さな鎖国日本では本来のキリスト思想も形を変えてしまったと、フェレイラの諭す表情がなんとも印象的。
深く失望し、目に光は宿っておらず、異国の地でただ静かに生きる様が悲しかった。
そんな彼らの心中にまだキリストが在るかどうかは神のみぞ知るってやつで、最後のCGは余計だと思ったけど謎にホッとした。

歴史の教科書に小さく載る絵踏シーンの裏側には、これほど熱く黒い人々の血や涙が流れていたと考えるとおぞましい。
だが映画を見れて良かったと思う。

エンドロール演出はやり手すぎる。
劇中音楽もゼロ、和太鼓のような響きと自然の音で映画の中に魂持ってかれる演出もすごい。本当にすごい。
Riisa24

Riisa24