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沈黙ーサイレンスーのezuのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
4.6
見よう見ようと思いつつも、キリスト教を理解できない野蛮で愚かな島国……みたいな感じの映画だったらどうしようという不安と本編の長さになかなか見るに踏み切れなかったけど見てよかった。

序盤はスローペースで進むので長く感じたものの中盤からのそれぞれの価値観のぶつかり合いがあまりにも興味深くて原作が遠藤周作とはいえ、スコセッシの日本解釈の深さにびっくりした。
願わくばあと15分長く観ていたいとすら思った。

今までキリスト教のことをあまり理解できなかったのだけどその理由もこの映画を見て腑に落ちた。
そして何故仏教とは違い(仏教もないわけではないが)あれほど脅威として扱われこの映画でも描かれたようなことが起きたのかよくわかった。
神は人々を救わない。中盤、主人公が神に自分を重ねただ祈るだけで何もせず妄信的に救いを待つ姿は傲慢とすら感じるほどだった。描かれるのはただの禁教の歴史ではなく、相手国を理解せずに押し付けようとしていた宣教師の姿や宗教に基づく価値観の違い、救いとはなんだったのか、この映画ではキリスト教の孕む矛盾のようなものも描かれているように思える。
人々の信教の姿は少し恐ろしくなるほどに純粋で、彼らを治める立場の人々には危険で妄信的なものに感じただろうというのもよくわかる。
一番好きなのは見せしめにされた人とその瞬間まで隣に待たされていた番人とのささいな会話。そう簡単にはいかないか。そうだよなあ。

ちなみに鑑賞後どうしても気になって当時の日本の英語力と元になった宣教師たちのことを調べたら現実は無慈悲で悲しくなった。しかしこれくらいの英語は喋れるようになりたいもの。
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