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チャイルド44 森に消えた子供たちのTorichockのレビュー・感想・評価

3.4
「Child 44/チャイルド44 森に消えた子供たち」

なんともまぁめんどくさい映画を見てしまったという印象。

見るつもりは全然なかったが、トム・ハーディ主演で、ゴッド(ゲイリー・オールドマン)もでているとなれば、そりゃ見に行くかと重い腰をあげつつ鑑賞してきました。
それにトム・ハーディの映画は全部見る宣言したしね。

みんな言ってることをわざわざなぞっていうのも食傷気味なんですが、ベストセラーミステリー小説だからといって、ミステリー要素を楽しみに行くと大火傷する作品。
本作は、この時代と時代背景による人間の闇とソビエト連邦の陰鬱とした恐怖政治と、その中で生きる人たちを描いたヒューマンドラマだったからです。

時は、スターリン政権が失脚する少し前くらいのソビエト連邦の話。
個人的には、ヒトラーなんかよりよっぽど怖いと感じるスターリン。
スターリンが独裁者だとしたら、ヒトラーなんて、地元の商店街とかで気が狂ってるのか知らないけど、ギャーギャーわめきながら、フラフラしてる元ヤクザみたいなもの。(←そんなの見たことないけど笑)

それくらい、スターリンの作ったソビエト連邦の闇はとてつもなく深いものだと思っていました。
なので、この映画に漂う尋常じゃないほどの、"何をどうしても、幸せになんめ生きてはいけない"という空気感が重苦しく、そのルックに圧倒はされました。

楽園に殺人は存在しない
-There is no murder in paradise-

という冒頭の文字のように、この舞台では、ソビエト連邦という国家の
体裁を揺るがす殺人なんていう事実は存在しない。そして、独裁というものが往々としてそうであるように、国家の名を汚すものはたとえそれが倫理的に正しくとも、粛清される時代なんです。
トム・ハーディ演じるレオは、そんな独裁政治の中で起きた、子供の失踪と惨殺事件、犯人を追い求め暴こうとする、正義を貫こうとして。
しかし、ここは仮にも楽園、灰色に染まり汚れ飢えた楽園。
彼は時代の流れによって様々な目に遭いながらも、事件を暴こうとするんです。

自分で書いといてあれなんですが、このプロットはめっちゃ面白そう!と思うんですけど、映画自体はなかなかの低速ギア、のぺーっと進んでいきます。
例えるなら、エンジンも車体も完璧なのに、タイヤがペッコペコな車です。
ミステリー要素が要ではないとはいえ、子供たちを消している犯人が暴かれた時の、"あ、そうなんですね"感がハンパない。
この事件を追いかけるというミステリー自体が、本作の物語的フックということを前提にしても、ミステリーにもちゃんとフックをかけなさい!という感じでした。これも多くの人が言っていますが、しかもこのミステリー要素が、ほとんどセリフで説明・やりとりだけなんです。
うーん、昨年のこの時期に見た"プリズナーズ"や"複製された男"のドゥニ・ヴィルヌーヴなら、この映画を撮っただろう?と考えざるを得なかったです。
他にも、ロシア人を描いたロシア国内での映画なのに、ほとんど英語で進んだり、この最近のトム・ハーディの明らかに肉体的にも強そうな人が、ロボコップさんことジョエル・キナマンとやりあったら、瞬殺じゃ...とか余計なノイズが出たりと。

ただ、嫌いになれないのもこの映画の特長。
冗長、説明セリフ多し、だけど良いのはやはり役者陣の演技と、物語が語らんとする本質のテーマだと思いました。
惜しい!と思った作品でした。
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