都部

映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)の都部のレビュー・感想・評価

1.5
分かりやすく子供騙しの映画だ。
そう思うのは、本作が『ドラえもんでなんちゃってなヒーロー物をやる』以上の心意気を感じられない出来であるからで、勘違いが引き金となる似非英雄劇の始まりと終わりは題材の類型の域を出ることが終始なく、またその始末の付け方も舞台装置頼りであるからだろう。

傑作映画『ギャラクシー・クエスト』を思わせる筋書き自体は好ましい。撮影で英雄を演じている姿から本物であると勘違いされた人間が、今まさに危機に瀕している他者の考える理想と演じているに過ぎない自分の現実像の乖離が齎す困難と対峙して、それでもと立ち上がる姿を英雄として讃える流れまで含めてそのままである。

しかし御遊び感が拭えないコメディテイストが問題の深刻さを浅慮にしているというのが本作の実態だ。実際に困難に直面して『本物の英雄ではない』とスネ夫の吐露により明らかになる場面があるが、そこで生じる葛藤はさして重大性を帯びることなく、前触れのない精神的成長によりこの物語は呆気なく進行する。それってこの手の題材のトロの部分だろと突っ込まずにはいられないのだが、かと言ってその前後に位置する英雄的な働きに秀でた面白味が発揮出来ている訳ではないので、本作が見せたいのは面々によるヒーローごっこのように思えて仕方がない。

本作では面々の特技に基づく能力がひみつ道具により与えられているが、これも見せ方に意外性があるわけではなく、ギャグとして扱われるのび太の"あやとり"も執拗いばかりで芸がない。またこの特技による活躍に出番を絞ることで、登場人物としての感情の機微は単純化され、毎度の記号的な役回りを消化するだけの存在と化しているのも気になった。

救済の対象となるポックル星の描写も不十分である。疑いを知らない愚民を博愛の精神で救うことが英雄なのだと言われたらたしかにそうなのかもしれないが、滅亡の危機に瀕してもコチラの感情がまるで動かないレヴェルで無個性な無辜の民として配置されているので、それによる英雄的活劇の価値が高まることもなく騙されて/救われる以上の存在感を発揮できていないのは問題だろう。

そして今回のマスコットキャラクターを務めるバーガー監督は分かりやすく舞台装置である。問題の始まりと後始末の為の能力を付与された このキャラクターがそれ以上の働きを見せることはなく、ただ賑やかし程度にその場に残留して存在し続ける立ち位置の腹立たしさは形容し難い。解決の一手となる存在ならばキャラクターとしての相応の厚みを持たせるべきであるし、布石/伏線回収と呼ぶにはあまりにも無法かつ乱暴すぎる能力には興醒めで、さながら本作の浅薄さを象徴するキャラであった。
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