りっく

映画 ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~のりっくのレビュー・感想・評価

5.0
「ウォレスとグルミット」然り、さすがアードマン印の大傑作!この情報量をこの密度とスピードで、それでいて子供にも分かりやすいように物語を語り、なおかつ見せ場と笑いどころをこれでもかとつるべ打ちにする驚異の脚本と、細部まで気が利きすぎている演出に涙さえ出てくる。

オープニングから見事だ。家族として可愛がられていた過去と、家畜としてしか扱われない怠惰な現在。ルーティーンのような毎日の生活をテンポよく描き、その日常の所作を後に伏線として回収する。数えればきりがないほど、そして「それも拾うのか!」という伏線回収力のすさまじさ、それが物語をさらに加速させる。思わず上手いと膝を打ってしまうほど見事なサービス精神だ。

いい映画に台詞なんて必要ない。それはチャップリンやバスター・キートンの時代からそうだった。それを現代のクレイアニメーションという形で改めて認識させられる。

行って帰ってくる物語というシンプルな構造の中に、アクション活劇やホラーやサスペンス、ドタバタコメディ、そして感動の人間ドラマといったジャンルがてんこ盛り。それでいてひとつひとつのシーンをくどくど長くする演出は避け、サクサクと物語が展開していくのが心地よい。
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