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不屈の男 アンブロークンのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

不屈の男 アンブロークン(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

「真実の物語」と書かれていたから、不審に思った。すると脚本はコーエン兄弟だ。つまり、そういう(シュールリアリズムを交えたコメディ)映画なのだ。

戦争中、仲間が海上に不時着したことから、捜索を行う若き米兵たち。しかし、捜索の最中、機器のトラブルで自分たちも海へ墜落してしまう。

その中の一人にオリンピックにも出場した経験のある若き天才ランナーがいた。しかし、どこを見渡しても海という絶望的な状況下で、救命ボートに3名という状態。たまたま止まったカモメや泳いでいるサメなどを食べ、極限の中、数日あるいは数十日間漂流する。そして、偶然通りかかった日本兵により救助される。

そして始まる捕虜としての日々。

ここで例の日本兵が如何に酷いことをやってきたのかという描写が表れる。この描写によって日本での公開はなくなり、アンジェリーナ・ジョリー批判、その他右派勢力を中心に反感を買う。

日本人がこれを見ると、おそらく過激な体育会系をイメージし、それに対し、だらしないというかルーズな外国人が規律に反し殴られる理不尽くらいに思うだろう。

これについては、まぁ水木しげるの本でも読めば分かるが、戦時下の日本軍は何をしたって殴り殴られていた。精神論こそがすべての状況を理解(出来ないかもしれないけど)すれば、彼らがなぜ殴られたのか分かる。

しかし、ラジオで無理矢理話させていたように「戦時中としてはこの上なくよい待遇」に違いない。過度な拷問がなく、収容所に戻るか、待遇の改善と引き換えに偏向的なラジオ放送するかという選択肢さえ選ばせてもらえる。

結果的に祖国を裏切れず収容所に戻されるわけだが、なんてことはない。自分で選んだ道だ。精神論こそ美徳の日本兵は見せしめと懲罰として捕虜全員に彼を殴らせる。

そして訪れる日本の敗戦と終戦。彼ら捕虜は直江津まで移動させられ、石炭を運ぶ仕事をさせられる。石炭の運搬の疲弊で倒れ込んだ男に日本人伍長(バード(笑))は木材を持ち上げる謎の理不尽を課す。だが、男は屈せず、逆に伍長の心を折る。

おそらくこの場面がアンブロークンなのだろう。

水浴を行い石炭に汚れた身体を洗うという寸前にアメリカ軍の飛行機が登場し、運良く助かったみたいな演出はよく分からないけど、彼らは無事アメリカに戻る。

その帰国時の写真と共に現在の彼の映像、想い、帰国当時の状態が述べられる。

そして水難の最中、神に誓ったように信心に耽った上で、こう締めくくる。
「復讐ではなく、赦すことが生きる道であると悟った。」と。

また、再来日し、長野五輪あたりで日本を走るという「赦し」と平和の象徴的な行いをして、自分の想いを体現する。

彼の赦しとは何に対するものだろうか?
戦時下の日本兵の扱いに対するもの?
それを戦勝国であり、原爆を落としたアメリカが言うことなのか?

当然その赦しは個に依存するものだが、敢えて言うと、彼は軍人だ。そして戦争だった。それが「赦し」?

理解ではなく?

まぁいかにも戦勝国アメリカのアメリカ側から描いた作品だ。別に悪くはない。反日とも思わない。むしろ証言を基に当時の日本軍の理不尽を誇張しつつも忠実に再現しているのだろうと思う。

単純にアメリカの総スカンの通り、面白くない。オリンピックの件も中途半端になり、ただの捕虜伝の位置づけだ。別に悲惨な仲間の死もなく、拷問も言うほど酷いものでもなくインパクトに欠ける。
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