jonajona

不屈の男 アンブロークンのjonajonaのネタバレレビュー・内容・結末

不屈の男 アンブロークン(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『耐え抜けばやれる』

初見なんですがアンジーってめっちゃ映画撮るのうまいんだなぁと衝撃。映画として凄く面白かった。

語弊があるかも知れませんがスピルバーグみたいな撮り方するなぁと思って、ずっと見てました。コーエン兄弟の脚本もいいけど監督として手腕がすごい。

日本軍の捕虜になったオリンピック選手。日本軍の強いる劣悪な捕虜収容所の環境下で己の志を曲げず生きた彼の実話。

という触れ込みだったのですが、実は凄く沢山の舞台にわかれてて、日本軍の捕虜としてのストーリーが始まるのは後半1時間弱から。
🙇‍♂️以下ネタバレ有りです🙇‍♂️

それまでは主に『爆撃機隊』『幼年期(これまでの人生)』『墜落・遭難』に分かれる。驚くことにそれぞれ面白さのジャンルが全く違う。

『爆撃機』…単純に戦争アクションとして非常に秀逸。終始主人公ら爆撃機隊に乗り込んだ彼らの視点で進行し、没入できて臨場感がある。ゼロ戦のスピード感ったら敵なら怖いでしょうな。B-24という爆撃機らしいのですが、機銃席や爆弾投下口が内部からはそんな風に見えるのか…っていう資料的な新鮮さも感じる。

『幼年期』…思い出の回想が爆撃機・遭難編の合間に差し込まれる。幼年期〜オリンピック選手となるまでの過程なのだが、ここが凄い。
お兄さんから走る事を教わってどんどん得意になっていく過程の魅せ方が本当に好き。シンプルかつドラマチック。見せ方が上手い。なんとなくこの王道な雰囲気と全体の構成がスピルバーグを彷彿とさせる。

『墜落・遭難』…サバイバル映画に早変わり。ここの描写もリアリティに拘りが強そうな印象。顔のやけど気味な日焼けとかは本物なんじゃないかと思うほど。サメが泳いでてスリルある描写もうまい。それに、鳥を捕まえて食べるとこの笑えるテンポ感が秀逸。軽口の叩き合いとかユーモラスなシーンが前半はちょいちょい光る。シリアスになって助けはこず、絶望の淵に立たされてからの日本軍登場シーンが映像描写的にとても優れてる。またここで使われる小道具(ボードの穴塞ぐピンとか)が地味に知的好奇心くすぐられる。ディテールを欠かさない。

『捕虜』…完全に戦場のメリークリスマス。絶対意識して作ってるはず、敵役の『渡辺伍長』(役者はミュージシャンMIYABI)が坂本龍一で、今回の主人公がデヴィットボウイじゃん。でもそれがいい。二文化対立の側面もあるものの今作では心の弱い愚かな支配者として存在し、残念ながら対立からの相互理解は生まれず。
ついに信念が試される。渡辺伍長は鞭で虐げて、甘言をささやく悪魔的存在。

○GOOD
・ディテール描写のうまさ。
音楽・映像・表情などでそれぞれの人物の気持ちを伝える巧みさ。
☆特に好きな描写
並木道で自転車で兄が先を行き、
弟に走らさせる練習。
→競争で他同年代をごぼう抜き、ラストは映さず、見守る兄といじめっ子が腰を浮かして『お』という顔をする
→兄を置いて走る弟(並木道)兄の笑み
光を浴びて走る弟→大人になってる

・さまざまなジャンルのごった煮感。
んで全部各々のジャンルとして上出来。

・日本軍というか渡辺伍長が
滅びそうな死のオーラを纏ってて、
日本の行末を暗示してる。
ちなみに、彼のことを古参捕虜が『あいつは初めからおかしいんだ』と評するなど、メタ的視点だけど、日本軍が皆捕虜に対して悪辣だった訳じゃないことに細部で触れていて、そこも含めてフェアな作りが上手いと感心。アメリカだけの狭窄な視点で物を作ってない。

・構成が見事。起伏に富んでて飽きない
キリスト教的試練の構図がそのまま物語的なのかもしれない。主人公に幾度となく訪れる試練。あれだけの目にあって、赦すことが極地と言えるなんて…すごい人。

・ラストの本人のお話が非常に感動的。
素晴らしい人間。まさか日本に走りにきてたなんて知らなかった。オリンピックの映像見て誰だろこの人?とか思ったお爺さんが実はそんな過去を抱えて今走ってる、って事もあるんだなと思った。

○bad
なし。あえてあげるとそもそもがキリスト教や宗教的教えを実践して、人生上手く行きましたという話が苦手。なので…これは映画のせいじゃない笑
jonajona

jonajona