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夜の片鱗のdiesixxのレビュー・感想・評価

夜の片鱗(1964年製作の映画)
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「闇金ウシジマくん」のフーゾクくん編を戦後日本の文芸映画に置き換えたような、あるいは成瀬の『浮雲』をさらにエグくしたような映画。男は徹底的にクズで、女は徹底的に搾取される。主人公の芳江が死んだような目で客引きしてるオープニングから、どうしてこうなってしまったのかを遡って語る形式がなかなかうまい。
「今日誕生日なんだー」って目をキラキラさせてたのに、悪い男に騙されてどんどん落ちていくストーリー。なんかウィキペディアとかで嫌な事件の項目読んでるような荒んだ気持ちになる。平幹二朗演じる英次のクズっぷりもすごいが、芳江がヤクザ連中に輪姦される場面の胸糞悪さには度肝を抜かれた。もちろん直接描写はないけど、終わった連中が、英次に「ありがとな」とか「いい女房持ってんな」とか声かけて去っていくところ鬼畜すぎる。さらに英次が中盤から不能になってしまってからの卑屈ぶり、すでに芳江も共依存の泥沼にはまって抜け出せないという筋書きにも暗澹とした。芳江に惚れるサラリーマンもいろいろ正論言って説得するけど、やることやってるっぽいのが、「風俗嬢に説教するサラリーマンしぐさ」でクソ寒い。
JAIHOの「知られざる松竹特集」の一本だが、先日の『猟銃』もそうだが、松竹にもこういうこってりした女性映画もあるのか、と自らの用管窺天を恥いるばかり。
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