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マリア・ブラウンの結婚のdiesixxのレビュー・感想・評価

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)
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敗戦直後のドイツ。美貌と知性と生命力で生き抜き、のし上がっていくマリア・ブラウンの一代記を、ナチスの罪に苦しみ、やがて忘れ去り、経済復興を果たしていく母国の歴史と重ねながら描く。『ローラ』、『ヴェロニカ・フォス』と続く西ドイツ3部作の第1作。ドイツの戦争責任を庶民の視点で鋭く抉る痛烈な社会批評を体現しつつ、何よりもハンナ・シグラ演じるマリア・ブラウンのたくましくも、いじらしい魅力である。夫の戦死を知るや駐留の黒人将校と関係を持ち、子を身籠る。また夫が復員するや彼を裏切り、お腹の子を失っても(流産なのか堕胎なのか)ケロリとしている。夫が服役中は、フランスの企業家オズワルトと愛人兼ビジネスパートナーとなり、それを夫に明かすことを憚らない。ビジネスディールでも辣腕をふるい、組合交渉では労働者側で立ち回る。ビジネスでもセックスでもオズワルトへの主導権を握り、しまいには使用人や家族を顎で操る冷淡で高圧的な女傑へとのし上がっていく…。しかし、それも全て夫のため。夫が久々に帰宅すれば、冒頭と変わらぬ健気で献身的な妻へと戻る。
オズワルトとヘルマンの屈折した愛情表現は後の『ローラ』を予見。アンビバレンツな性格描写が矛盾なく両立し、しかもそれが戦後ドイツの欺瞞と糊塗とも重ねられている。爆撃に始まり、爆発に終わる数奇な結婚物語。
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