ちょっぴり奇妙で、心温まるオランダの作品。
妻に先立たれ、息子とは音信不通の孤独な初老の男フレッド。敬虔なクリスチャンで、日曜の礼拝以外は人にも会わず、バッハを聴きながらひとり几帳面に暮らす。
ある日、口を利かない謎の男テオがフレッドの家に住みこむことになる…。
オジサン2人の共同生活がシュール。テオの振る舞いも奇妙だけど、途中までテオがなぜ口を利かないのか、なぜこの村にいるのかがわからず、主人公についても何も語られないので、よけいにシュールに見えてしまう。
でも、後半で劇的に話が展開します。
無垢なテオは自由の象徴。狭い視野の中で生真面目に生きてきたフレッドは、テオと暮らすうちに視野が開け、孤独な心がほどけていく。そして、自分の過ちに気づき、人生をやり直そうとする。その過程が清々しく、微笑ましい。
信仰心の高い小さな村ゆえのLGBTへの偏見、近隣の男の苦悩と孤独などの問題を秘めつつも、多くは語らないのがこの作品のいいところなんだと思う。
フレッドを象徴しているようなバッハの劇伴、山羊のマネをするテオ、フレッドと息子の再会、マッターホルンのシーンが印象的でした。
ジャケ写と邦題のチョイスは疑問だけど、孤独になってこそ見えることもある。そういう意味では、孤独になってみるのも悪くないってことかな(強引)。
人が人を許容することが新しい一歩につながるって素敵だなって思える作品でした。