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野火のColのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
3.3
野火(のび)=野原で草木などが燃える火事

大岡昇平の原作小説「野火」の映画化。この映画は舞台こそ戦場ではあるがどこか寓話的というか、戦争体験者の視点を通して極限状態に陥った利己的な人間達がシンボリックに描かれた作品に感じた。映画を見終わったあと見覚えがあるな・・・なんだろって思ったら自分は江戸川乱歩の作風に近いと感じた。後ほどよく調べるとエドガー・アラン・ポーの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』が大枠になってるという・・なるほど(笑)塚本晋也監督は歴史や背景ををあまり描かないというか、無いに近いので原作で太平洋戦争とはわかるがこの作中に限っては「とある戦争のできごと」に感じるのでその辺も寓話的に感じた一つ。

映像的には「海獣シアター」ファンにはたまらない単一コントラストの妄想シーンであったり、激しいフラッシュバックシーンやはたまた凄惨なゴア・人体欠損シーンお馴染みの要素はしっかり入っており、また塚本節な癖のある脚本がいままでの作品を楽しんできた人には満足出来る作品に。ただ塚本作品にゆかりのない人がみたら少し物足りないかも・・。戦争映画だが戦争としては語られず、見所は人間の禁忌である「カニバリズム」について・・なのだが食人を選択肢として選ぶしかない過酷な環境説明や、非人道的行為への葛藤描写が芯食ってないのでテーマの割に重い映画ではなく、人間の業の駆け引き・ドラマに脚本が向いているがそこまで胸糞映画とも呼べないレベルに・・・。ラストシーンは不気味でしたがね。

機会があれば松本清張の『野火』も見比べたい。
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