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オッペンハイマーのColのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
これはオッペンハイマーの罪の物語。

日本は半年程遅れての公開ではありましたが、まずは観られて何より。原爆がテーマが故、公開されないかと大分ひやひやして待っておりました。ノーランファンからとしては勘弁してくれと思ってた上で鑑賞だったので感動もひとしお。内容を見てもし日本のみ未公開だったら当て違いなストーリー内容だったなと思うわけで。とは言え全世界同時上映ではやや難がありでアカデミーも受賞し、よきタイミングだったと思われる。

日本の被爆シーンは一切なく、オッペンハイマーの幻覚としてのみ表現されている。そのアメリカ国民の祝賀会のシーンについは出色の演出。登壇する前に黒焦げの少年の幻覚があり、観客足踏みは爆弾投下の爆音に、アメリカ国民の歓声は被爆者の悲鳴に変換されたオッペンハイマーの脳内は本人しか知り得ない罪の意識が表現されていた。正直この映画の評価はこのシーンにつきたと思う。原爆の発明を英雄視しておらず罪の十字架を背負わせた咎人と写している。ノーランのストーリーラインも秀逸で、お家芸の時系列操作ももちろんだが、オッペンハイマーVSルイス・ストロースとすることで自伝物の辛気くさくなる話をエンタメ要素を含み観客を置いていかない運び。ウィットに富んだ会話劇も緊張と緩和としての牽引力と流石の手腕。ノーラン作品の中では、エンタメだけで終わらずメッセージ性も残す映画的価値の格がワンランク高い作品だった。

あくまで主人公の後悔の念の掘り下げ、オッペンをプロメテウスと表すことで全世界を破壊しかねない危うさに手をかけたアメリカ政府への揶揄であり、さらに最後のアインシュタインの会話もオッペンハイマーの罪(アメリカの罪)を表現したものと、今一歩アメリカの意識の変化を感じられるラストだった。冷戦の最中であればこんな作品は生まれないだろう。

なので唯一と被爆国とこの作品の文句をいうのはちっと違うのかなと思ったわけで。日本が戦争を起こしたことの無い国というなら別として。
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