ササキ・タカシ

人狼ゲーム ビーストサイドのササキ・タカシのレビュー・感想・評価

3.0
長編デビュー作『パーク アンド ラブホテル』がベルリン国際映画祭フォーラム部門最優秀新人作品賞を受賞し、国内外で高い評価を得た新進の映画監督、熊坂出の最新作。先日公開された『リルウの冒険』に続き、同監督作が二週連続での公開となる。昨年公開された『人狼ゲーム』に続くシリーズの二作目。

8人の男女が監禁されその中から「人狼」と呼ばれる役割の人間を見つけ殺害しなければ全員が死んでしまうというルールのリアルサバイバルゲームを描いたサスペンスだ。

設定がチープで既視感が強く、おまけにこういった殺し合いゲームにおける陰鬱としたイヤ~な雰囲気は苦手なのだが、前作は丁寧な心理描写と俳優たちの迫真の演技が光る見どころの多い作品だった。第二弾となる本作は前作との直接的な話の繋がりはなく前作未見でも内容が理解できる作りにはなっているのものの、ゲーム開始までの導入部分がやや簡素化している。今回は主人公が人狼であることが最初から明らかになっているので前作のような「誰が人狼なのか?」などを推理するミステリー要素は控え目、生き残りをかけた裏切りと化かし合いの心理ゲームがお話のキモとなっている。しかも、最後まで優等生的ヒロインだった前作の主人公と違い今回の主人公は最初からゲームに対してやる気満々なロックロール不思議少女だ。リアルな感情移入なんて早々に放棄して、彼女のヒロイックな(漫画的とも言える)駆け引きを中心に楽しむ映画なのだろう。主人公以外のゲーム参加者も前作よりキャラが立っていて、死ぬ経緯もそれぞれ個性的だ。彼らの一筋縄ではいかない言動が物語に厚みを出している。それだけに、「参加者が一人一人死んでいき主人公が生き残る」以上のカタルシスや展開の捻りがないのが残念に思った。もっとぶっ飛んだ話の飛躍を見せてくれても、と思う。

注目の若手女優、土屋太鳳は破天荒な主人公をとても上手くこなしている。彼女だけでなく、他の役者陣の演技もいちいち真に迫っていて見入ってしまった。続編があるかどうかわからないが、若手俳優の演技合戦の場としてこのシリーズが続いていくのも面白いかもしれない。
ササキ・タカシ

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