JIZE

ブルー・リベンジのJIZEのレビュー・感想・評価

ブルー・リベンジ(2013年製作の映画)
3.8
開幕約20分間の無言状態で遂行する復讐劇が残酷にも切な過ぎて胸をグッと鷲掴みにされた!!過去に主人公ドワイトの両親を殺害したクレランド家のウェイドが刑務所から刑期満了を待たずに出所した知らせを受けドワイトが報復に転じるお話,な訳ですが,復讐が復讐を連鎖さす言わば報復合戦ですね。作風も外連味がなく静寂路線をひた走るオフビート感が鮮烈なバイオレンス描写と対照的なエモーショナルの相関を醸し出しこの対極感は割と抑揚を促し好きですね。今作の率直な第1印象としては...作風の物言わぬ鋭さに狙撃!!されました。言葉じりが少なく各描写が抑制気味に配される為,人間同士が本気で激情を交えぶつかり対面する際の爆発感or放出感は作風ギャップを感じさせ心底見事!!に思えました。また,開幕20分と残り71分で別作品化を果たす二分構成も前半部の"過去軸に対する復讐劇"と後半部の"現在軸で展開する報復劇"を見事に仕分けシークエンス的にも新鮮さ溢れ,この妙は展開の繋ぎ合わせ方が実に面白い。ドワイトの前後部に付随する差異も①顔ヒゲを剃り②ヨレヨレの服装を正装し③髪型を整える,程度で意識は割とそのままでここまで作風が変化する展開も珍しくドワイトの無欲な表情が絶妙でした。

結論を述べれば..上述したオフビート感とバイオレンス描写の作風ギャップは勿論,ドワイトの"無欲な憎悪の転じ方"が燃え盛る炎に無理やり油を注ぎエンジンを効かす様子で,気性(銃口)も鋭く底知れぬ恨み程度は鎮火する事なく報復遂行に向け黙々と燃え盛る。冒頭,他人の家に侵入し①入浴したり②鞄から食べ物を盗み食べたり,とホームレス生活から女警官エディにウェイドが出所する事を知らされた以降,ドワイトの過剰的とも言える眼球の迅速な動き,挙動不審感,尋常な汗の量等,焦燥感の配し方も追い込まれる危うさが感じ取れ同時に両親を殺害がされた恨み辛みから来る歓喜など色んな喜怒哀楽の表情が入り混じり落ち着きがない"内面上の余裕のなさ感"は物凄く感じました。勿論褒めてます。

他物語面でもウェイド殺害以降,ドワイトが家族を守る正気に戻ったかのようなホームレス時代との内情対比。現在までに培う全ての汚れを落とし家族を守るウェイドには勇ましさor格好良さすら覚え同時にウェイドとクレランド家は運命的な境界線の上で長きに渡り対峙して来たんだ!と過去描写は据えずとも感じ取れた。中盤,ウェイド家に奇襲を図る場面でも武器の選択はボーガンか!というツッコミは微小にありましたが男1人で家を守り抜く潔さは余計な外連味がない分,ストレートに格好良く映りダサいけど結果的に格好良い!的なモサ男がひたすら踏ん張る姿に励まされました。ホームセンターでペンチを購入しボーガンの矢を抜く描写痛々し過ぎましたが。。あと銃マニアであるウェイドの親友ベンの寛容感も度量が広過ぎて逆に笑えました。彼の存在がウェイドの決心を後押し報復意義を固まらせた風に思えた。ベンに関してはキャラ設定が万能過ぎて完璧ですね。

従い,タイトルにもある"ブルー(青)"は中盤あるポイントで服装が茶色に変化しますが復讐により正気を取り戻す様を温かみある暖色系で体現したかったからみたいです。この作品は復讐劇が主だがギャング撲滅を図る観点で英雄譚or感動譚でも捉える事が出来た。暴力描写も目を塞ぐ程でない為,オフビートな爽快さを好む方全員に勧めたい作品です。ホームレスから一般中年男性に更生し家族を守る!!この過程箇所だけ切り取っても応援したくなる切なさは随所に垣間見え感動です。ドワイトが発言する「カギは車の中だ。。」にはクレランド家との因縁を終焉させる全ての意味合いが込められてました。クライマックスの少年に希望を託す描写も監督が少年に対しメタ的にも希望を託した結果なのかもしれません。男の儚い生き様を堪能し涙して下さい,お勧めです!!
JIZE

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