ハレルヤ

消えた声が、その名を呼ぶのハレルヤのレビュー・感想・評価

消えた声が、その名を呼ぶ(2014年製作の映画)
3.9
第一次世界大戦時のオスマン帝国。トルコ軍から強制的に連行されて厳しい労働を強いられるナザレット。処刑されそうになるも辛うじて一命を取り留める。しかし喉を切られた事で声が出せなくなったが、生き別れた子供たちを探しに長い旅を繰り広げるヒューマンドラマ。

この作品の背景にあるのはアルメニア人虐殺。100万人が犠牲になったと言われている人類史上でも最悪の虐殺の1つ。人間としての尊厳なんかまるで無い扱いで働かされて、使い物にならなくなったら惨たらしく殺される。前半の主人公たちが処刑されそうになる場面の悲惨さは、この出来事を端的に表しているように思えました。

不幸中の幸いで自分に手をかけた兵士が怖気づいた事で致命傷は免れたナザレット。しかし喉を切られた事で声が発せず、大きな痛手を受けた上で生き別れた家族を探す事に。

食料や水分を必死に確保しながら歩み続けるナザレット。その途中で死の淵にいて苦しむ義理の姉を自らの手で死なせなければいけない悲しみ。大人も子供も十分な栄養が無く地獄のような環境。そんな中何も為す術がないナザレットの辛さも伝わってきます。

これが今も現在進行系で起こっているイスラエルとパレスチナの争いの原因の1つになっている現実。昔からのこのような恨み辛みが積み重なり、現代の悲劇にも繋がっている負のサイクルを改めて思い知らされた気がします。

大戦後も何とか仕事をしながら生き続けるナザレット。チャップリンの名作「キッド」を見て感極まる姿は印象的でしたし、娘が生きている証言を聞いた時の衝撃が走った表情も、タハール・ラヒムの演技力の凄さが感じられたところでした。

行く先々で知り合う人々が皆良い人過ぎるのも、ちょっと出来過ぎな気はしましたが、そんなの目を瞑れるほど深いメッセージを有した作品。ラストも切なくとも温かみのある終わり方で良かったと思います。
ハレルヤ

ハレルヤ