フワッティー

あやつり糸の世界のフワッティーのレビュー・感想・評価

あやつり糸の世界(1973年製作の映画)
-
ファスビンダー唯一のSF映画(TV放送用)。およそ50年前に作られた多層世界を舞台にした作品(原作は50年代)。二部作で計3時間半。

フォルマー教授の遺した「アキレスと亀」の落書き(ゼノンのパラドックス)、自分が認識する物体や概念は真に実在しない(イデア論)、自分が生きている世界が箱庭かもしれない・それを否定できない、などの哲学的要素がストーリーの理解を大きく助ける。

鏡・ガラスによる人物の反射だけでなく、電子音などによって作られた不穏な音楽を多用し、映された世界の不安定さを示す。

大量のコンクリートブロックが落下し死にかける、富豪の妻に同化した女性が泣いてる、仮想世界の人間が自殺未遂するなど、前半ではささいな挿入に限られた、出来事的な不穏さも、後半では一気に拍車がかかり、世界は崩壊していく。

そのターニングポイントとなったのは、前半最後の、上の世界を目指すアインシュタインがシュティラー博士に真実を伝えるシーンだろう。アインシュタインがけたたましく笑う。ファスビンダー映画において、大笑いは乾いて響く。
フワッティー

フワッティー