えそじま

第三世代のえそじまのレビュー・感想・評価

第三世代(1979年製作の映画)
4.7
実のところ人間という集団の本質にとっては、生活が満ち足りていようがいなかろうが赤の他人が不幸だろうがどうでも良いことであって、常に腹の底にある生来の残虐性を正義や秩序といった都合の良い言葉で放出して正気を保っているのかもしれない。社会の安寧によって問題(悪とされるもの)が分散、縮小すればするほど、それが愛なきセックスであれドラッグであれ娯楽であれ、大小形に個人差はあるものの、行き場を失くした攻撃性がいずれも退廃を生み出していくという。良くも悪くもせっかちなので、奔流する情報の取捨選択もできず、真の敵を見失い、終いには当の本人達も気づかぬうちに本来倒すべきであった狡猾なシステムに組み込まれているという滑稽な始末。

要するに人間頭の中が暇過ぎるとろくなことを考えない、それなりの生活ができる安全圏にいながら、中途半端な覚悟で社会の変革や大それたことを考えているくらいなら、生活に没頭していた方がよっぽど社会の為になっているということだろうか。

何の因果かこれと同じ年に同じ敗戦国日本で『太陽を盗んだ男(1979年)』『復讐するは我にあり(1979年)』が公開されているのも面白い。
えそじま

えそじま