MasaichiYaguchi

ドローン・オブ・ウォーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ドローン・オブ・ウォー(2014年製作の映画)
3.5
この作品を観ると、これが現代の戦争なのかと思ってしまう。
戦闘を仕掛ける側は、世界一の歓楽都市ラスベガスにある基地に設置されたコンテナの中、そして遠隔操作された無人機ドローンで攻撃される側は、ラスベガスから一万キロ余り離れたタリバンのいる中東。
この無人機ドローンを使った戦いは、今までの戦争の概念を一変させる。
この新しい戦争における兵士は、戦場で攻撃を受けることもないから無傷で勿論死ぬこともない。
毎日サラリーマンのように基地に行き、その日の内に帰宅し、休日も普通にある。
ある意味、戦う側として戦地に軍隊を派遣する必要もないし、犠牲者も出さないで済むという、この上なく理想的な戦い方のように思える。
だが、この戦争には血が通っていない。
映画を観ていると、恰も戦争ゲームをしているような感覚になる。
モニターを観ながらゲーム機のコントローラーで敵に狙いを定め倒していく。
ただゲームと大きく違うのは、モニターに映し出された敵、時には関係の無い民間人を巻き込んで吹き飛ばして、実際に命を奪っていること。
この現実感の無い、場合によっては国際法上問題ありそうな無機質な戦いは、その戦いを行使する者までも感情の無い殺人マシーン化を強いる。
本作では実話を基に、優秀な戦闘パイロットだったトミー・イーガン少佐が、ドローン操縦部隊に配属後、徐々に心が壊されていくのをリアルに描く。
アメリカ同時多発テロ事件に端を発し、大義名分の下で行われる対テロ戦の歪んだ一面を鮮やかに切り取った本作は、ドローン戦争の是非を問い、血の通った人としてどうあるべきかを我々に投げ掛けている。