Torichock

予告犯のTorichockのレビュー・感想・評価

予告犯(2015年製作の映画)
3.8
「予告犯」

俺の感想を教えてやる

個人的に中村義洋監督の作品は個人的にも好き嫌いが分かれる傾向がありますが、中村監督の"本呪シリーズ"から来るドキュメンタリックな作り、SNSやテレビのワイドショーを使った各メディアへの皮肉の効いたジョークと視点が好みなんです。
世間一般的には評価が低いですが、前作の"白ゆき姫殺人事件"の作り方が中村義洋監督の作り方にピッタリはまったと思い、僕はとても好ましい一本となりました。"みなさん、さようなら"もちなみに大好きです。

そして本作、生田斗真主演のダークヒーローモノです。
前作は完全なゴシップネタを多用したブラックコメディだったのに対して、今回は割と真剣に犯罪映画。
正直ネジの緩みが気になる作風なので、甘いなと思うところはありましたが、個人的には大好きな負け犬たちのワンスアゲイン映画だったので、僕は好きな作品でした。

つまり、犯罪映画として甘いところも多いけど、それで浮き彫りになるところも愛おしいという、感想としては幾分か矛盾しかないんですが、
シンブンシたちのチーム感が本当に素敵で楽しかったです。

特に、彼らの決意と結束を固めるとある事件の描写が本当に良かった。
友情の絆として、血を通わせる絆ではなく、自分たちが断罪すべき人間の"返り血"で結束をするというところが、ダークヒーローとしての意味やかっこよさを感じずにはいられないところが本当にかっこよかったし、ジャニーズで、テレビ出資の商業映画であっても、そこを怯まずしっかりと見せてくれた中村義洋監督の勇気には賞賛を与えたいと思いました。
また物語のテーマ自体が、それだけのことでも人は動くし戦うというテーマなのもよかったです。
確かに、それが物語のスケールを矮小化してる感は否めませんが、僕からしたら、それでも通したい道理があるんだ!という、いなくてもいい存在たちの正しくないことさえ内包した唯一のボロボロの毒牙が、僕個人も嫌悪してる存在や対象(DQNやSNSで調子こいてるガキども、そしてそれをわかった顔してる評論家の虫ケラどもや、それを傍観する民衆)を攻撃するのは、カタルシスに溢れたシンブンシ達の衝動でした。
ソレダケのことで!というのは簡単だけど、ソレダケ!のことでしか生きていけない人間がいるんだよ、立派な奴ら。よく覚えておけ。
なるほど、これはチープな話だけど、あの名作"ファイト・クラブ"に通づるモノは感じました。
シンブンシチームのアンサンブルもとても良かったです。まずは生田斗真は本当に素晴らしい。絶妙なんですよ、どこをとっても。ちゃんと、イケメンだけどダメな人間感も出てましたし。荒川良々、鈴木亮平、そして濱田岳。おれも、あのチームに入りたいと思えるくらい良かったです、それだけでこの映画は成功してないかな?と思いました。

逆に良くなかったところもくっきり出てしまったのが惜しいところ。
前作の"駆込み女と駆出し男"でも感じましたが、戸田恵梨香の演技はどうしても演技してる感が強く感じました。今回は特に見ていて痛々しかったくらい。
SPECシリーズのようなデフォルメされたキャラならまだしも、普通のキャラなら普通なキャラだけ、なんか演技してる感じ。特に、ラストシーンやゲイツとのチェイスシーンの後の叫びとか、クサくて赤面してしまいそうになるくらい。僕はきっと、この人が肌に合わないのでしょう。
さらに、自分は頑張ってここまで来たのよ!的なことを言ったのだとわかった瞬間、こいつはなんて奴なのだ!と思ったんですが、そこはゲイツが"頑張れるだけ幸せなんですよ、あなたは"って言葉で、ぐっと飲み込みましたけど。
しかし、ゲイツとのチェイスシーン自体は音を使わずに、シンプルな追いかけっこに仕立て上げていて、めちゃカッコよかったです。人に追われる、ということの嫌な感じを忠実に抑えていてフレッシュでした。

あと、演出面でもどうしても納得行かないところがありました。
ゲイツが派遣社員だった頃のシーンで、ブラック企業の社員たちがゲイの陰口をTwitter画面で呟くシーンで、ボイスオーバーをするんです。あれは、すごいダサかったしイヤでした。あれは、普通の会話の音の上に、人の陰口のツイートを表示させる方が、意味とか怖さとか嫌味感も出ると思うんですよね。

とまぁ甘いところもたくさんあるけど、愛らしい一本でしたし、ここ最近の犯罪モノの日本映画の中でも、突出したところはいくつもあったので楽しかったです。
生田斗真ファンは見に行かないなんてのはナシですよ!
Torichock

Torichock