櫻子の勝手にシネマ

キャロルの櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
5.0
ふと思い出して観たくなった映画。
今回で3回目の視聴。

原作はパトリシア・ハイスミスの小説。
彼女は死後に残された日記やノートから、レズビアンであることが公然となった人物だ。
『キャロル』はハイスミスの実体験をもとにした内容らしい。
本作が確かな説得力と、細やかな感情模写がある秀作に仕上がっていたのは、原作者がセクシャルマイノリティであったことも理由なのだろう。

映画の時代背景は1950年代。
キャロル(ケイト・ブランシェット)の夫や義父母の言葉から察するに、
同性愛は心の病のように言われ、キャロルは心理療法まで勧められている。
だが、本作は同性愛の是非を問うものではなく、2人の女性の美しさに魅了され、映像美や音楽を楽しむという側面がある。
映画を観終わったあと余韻が続くのは、言葉よりも2人の表情や仕草が美しいから。

劇中に度々登場する香水の存在が気になる。
キャロルが結婚前から身に纏っている香りを想像してしまう。
CHANELのN⁰5かGUERLAINのMitsuko…
身も心も成熟した大人の女性にしか似合わない妖艶な香りであることに間違いないだろう。

『キャロル』は、丁寧に作られた洗練された名作だと思う。
観ている側は、禁断の恋愛にハラハラし、同時にその美しさにときめき、最後には正直に生きようとする勇気に魅了される。
そういうシンプルな作品だ。
キャロルの幼なじみのアビー(サラ・ポールソン)の存在も良かった。

もう一人の主演テレーズを演じたルーニー・マーラは、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞している。
パッツン前髪がとても可愛いくて印象的。
サンタの赤い帽子もよく似合っていた。
実力派女優のケイトに引けを取らない抜群の演技力。
2021年公開の映画『ナイトメア・アリー』で再びケイトと共演しているのでこちらもオススメだ。