みあせぶ

キャロルのみあせぶのレビュー・感想・評価

キャロル(2015年製作の映画)
3.8
許されぬ恋、止まらない想い。


1952年のNY。そこにはレトロでどこか洒落た世界が広がっている。
世間はクリスマスシーズン。テレーズはデパートのおもちゃ売り場で働いていた。恋人のリチャードもいて順風満帆にも思える生活だが、彼女はどこか不満げそうに見える。
そこにやってきた1人の貴婦人。
金髪のボブ。高級なファーコート。優しそうな瞳。赤い口紅。
そして目が合った。テレーズは思わず見とれてしまったことを気づかせないように目をそらす…

この数秒間の出来事で既に2人は結ばれていたんだと思う。お互いに何かを感じあっていた。
そう思うと、この冒頭シーンの一瞬は本当に感慨深い。

現代のようにマイノリティに対しての理解など皆無なこの1952年という時代。現代も完全に理解されているわけでもなく、最近はLGBT映画が社会風刺としてよく出ている。ぜひ本作も多くの人に観てもらいたい。私も「君の名前で僕を呼んで」に続く2作目のLGBTが大テーマとなる映画だった。

テレーズとキャロルのファッションはもちろんのこと、街並みや佇まい、言動の全てが「美」だった。
ラブシーンはまさにアート。女優2人の体を張った自然体な演技に思わず涙。

本作の鍵となる「キャロルが抱える問題」は、全ての人が理解できることではないと思う。私もまだよく理解出来ていない。自分勝手すぎるのでは?と思ったりもする。

たとえ「愛」が同性愛というカタチだったとしても、本質的には異性愛と何ら変わりない。
人はどうして偏見を持ってしまうのか、今の時代に生まれた私はまだよく分からない。物心ついた時にはもう、ある程度の理解が広まっていたからだ。
映画を通して様々な人の気分になりきれることはすごくよい機会だと思っています。
普通に生きていたら出会えないような気持ちになることだって可能です。
本作でも2人の気持ちに寄り添って観ることはできると思います。冬が近づき何となく切ない気分になってきたこの頃。ぜひ、この映画をご覧頂きたいですね。
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