石

キングスマンの石のネタバレレビュー・内容・結末

キングスマン(2015年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

予告のオシャレさとギャグを期待していたのですが、なんとも微妙な作品でした。

スタイリッシュなスパイものにしたいのか、ブラックギャグ盛りのスラップスティックにしたいのか、はたまた紳士への成り上がり成長譚にしたいのか。どれも劇中散りばめてありながらその一つ一つが突き抜けておらず、構成というか配分もどこかおかしいので、どのスタンスで観ればいいのか最後まで悩みっぱなしでした。

この映画の構成・配分を簡単に言うなら、スパイパロディ→ガチンコスパイ/ガチンコ訓練→ガチンコスパイ/パロディ。要はアゲて落としてアゲるという典型的なエンターテイメントではあります。が、しかし、中間のシリアス部分を拭うほどの爽快さが後半に控えているかというとそうではないんですね。というのも、後半はスパイものというより所謂アクションものになっていくんです。紳士らしさがどこへやら、ドンパチで終始しちゃうんですよね。問題の集団首爆破も、絵的な衝撃はありましたが、それやるのかよ……感だったりそれまでの"欲しくない"ドンパチも相まってどうでもいいなって思えてきちゃうんですよ。所謂カタルシスを感じられない、積み重ね方を誤った形になってしまいましたね。

また、終盤が爽快感に欠ける要因として、敵ボス・ヴァレンタインがあまり悪いやつではないし、可愛げがあるわけでもない。つまりどうでもいいヤツ過ぎるんですよね。もう少しザマァ感出るキャラクターに作ることはできたと思うのですが。

エグジーの成長譚としても正直言って微妙です。というのも、エグジーがエグジーらしらをもって紳士にはなれていないんです。それはラストに集約されています。
ラストの親父コテンパンシーンを通して伝わってくることが、結局エグジーはハリーの猿真似をしているに過ぎないってことなんですよね。田舎出身らしさ(?)やエグジーらしさが感じられない、平民出身だからできたことが描かれてはいないんです。ボスとの決着がついた後一目散に王女の元に走って行ったところは中々下品で彼らしい行動だったように思えたので、あそこで終わっていれば小粋だったんですけどね。余計な尾びれを付けたもんだから、紳士らしさの押し付けが浮き彫りになり、"こうあるべき"という閉じたメッセージになってしまったかなと。
また、ハリーが信奉対象なのであって、紳士=良いこと、という提示が映画内でなされていないんですよね。そもそも紳士についての定義すら映画内では語られませんし。絶対的なゴールが不透明なままエグジーは努力を重ねていくんです。するとどうでしょう、ラストのエグジーは、ハリーをコピーした微妙な形の"なにか"になってるんですよね。"マナーが人間を作る"を同じシチュエーションで使っていましたが、エグジーがマナーを習得した・活用したところがないんですよね。
まあ、何が言いたいかというと、エグジーは成長してないんです。強くなった"だけ"。2時間かけて、なんすかコレ。

ギャグも予告ほどのキレは無く、どの分野についてもイマイチな、なんともガッカリした一作でした。

アクションの迫力・ケレンはありましたね。見やすかったし、カッコよかったです。
石