タイトルロール、「タランティーノ劇場長編8作目、、、ヘイトフル8!!」の誇らしげな事!!
我らがQTの新作ですから、まあ、面白くない訳はありません。
もちろん、ノリノリで愉しみましたが、、、こりゃ、ちょっと困ったシロモノ。
先ず、往年の大作映画にオマージュした70ミリフィルムでの撮影。
冒頭の雪深い山道を駆ける駅馬車のシーンはさすがにダイナミックですが、本編がほとんど山小屋の中の密室劇で展開される為、特徴が活かされてるとは思えず、カメラの鈍重さだけが気になってしまいました。
あと、「イカれているけど、とってもチャーミング」なQT映画のキャラクター達をボクらは愛して止まない訳ですが、とてもヘイトフルな今回のキャラクター達には感情移入するのが、とても難しいです。
例えば。
恐らく観客の心を1番惹きつけると思われるのはJJリー演じるディジーだとおもうのですが、彼女が実際の所、どれだけの極悪人なのか布石が足らない為、
翻って、カート・ラッセル演じる賞金稼ぎが、彼女を手荒に扱うシーンが、全くギャグとして機能せず、不快にしか感じられない。
似た様な事は8人のキャラクター全員に言えて、各々の考えや、主張を基本ダイアローグだけで見せていくので、単調だし、一面的で深みが足りないと思います。
お得意の時系列シャッフルは一度だけ行われますが、せっかくチャプター構成にするならば、個々のキャラクターのバックグラウンドを回想シーンを織り交ぜるなどして、人物描写にもっと深みを入れて欲しかった。
(マーカスが将軍の息子を殺した話をする所は白眉。ああいうシーンをもっと盛り込んでくるのかと思ったのですが、、)
実際に見えている事(言っている事)と、隠されている事(思っている事)のギャップを愉しむのがミステリーの醍醐味だと思うのですが、その点で本作は構成も物足りないと言わざるを得ません。
ティム・ロスとマイケル・マドセンの登場もあり、どうしたって傑作処女作「レザボアドッグス」との類似性と、明らかな作品的な完成度の低さには、ファンとしては、消化不良なのです、、。
と、まぁ、こんだけ文句言ってたって、やっぱりファンなんで、
あのアタマ吹っ飛ぶトコ、最高だよねぇ、とか、あの音楽の使い方が渋いよなぁ、とか、やっぱサムエルが長い説教垂れるシーンは、映画的快感に溢れてるなぁ、とか、充分に楽しんでしまうのですけれども。