竜平

ヘイトフル・エイトの竜平のレビュー・感想・評価

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)
4.2
吹雪の山中、とあるロッジにひょんなことから集まってしまう人々。様々な思惑や嘘が入り乱れつつ展開していく、タランティーノ流の密室ミステリー及び西部劇。

相変わらずのタランティーノ節が今作でも炸裂。やっぱり見入ってしまう会話劇、ヒリヒリとした空気感に緊張感、そして漂う一触即発ムード。長めの上映時間とじっくり魅せる演出、極め付けはバイオレンス描写。見る人を選ぶ作風であることは間違いないけど、ハマってしまうとこれがもう本当にたまらなかったりする。前作『ジャンゴ 繋がれざる者』と同様に、ちょっぴり小汚い西部の世界観がいい感じ。タランティーノの個人的なものとも取れる痛烈な批判、そして皮肉めいたストーリー展開というのは彼の後期の作品ではもはやお馴染みなんだけど、今作に於いては南北戦争後の時代背景を組みつつの人物同士の関係性というのが重要なのかなと思う。『ジャンゴ』で描かれた黒人差別の問題提議の流れもあるかも、まぁ歴史のことはよく知らないんだけど、とにかく人種間でいろいろいがみ合ってる時代なんだなという認識を持っとくだけでもなかなか楽しめる。でそんな設定を加味しつつの、謎が多く何を考えてるのか予想しがたい登場人物たち。そのキャラ作りと、徐々に真実が判明していく構成というのも本当に秀逸。待ち受けるラストというのはバッドエンドのように見えるけど、じつは捉え方としてはハッピーエンドが正解なのかな、的な。

彼の作品でよく使われるチャプター構成が今作ではここぞとばかりに活きている。じっくりと小説を読み進めるような感覚。まずは他の作品で慣らしてから、のんびり見れるときに臨んでほしい、そんな作品。にしてもタランティーノ映画にマイケル・マドセンは鉄板だなと。相乗効果バツグン。
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