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ゴジラ キング・オブ・モンスターズのmのレビュー・感想・評価

4.7
怪獣描写に関してはもう1兆点って感じで、怪獣映画史上最高クラスと言っていい。

ゴジラ、ギドラ、ラドン、モスラ、それぞれの生物としてのリアリティを増しつつ、キャラ付けも強化。監督のラドンへの愛情も凄いが更に凄いのがギドラで、三つの首それぞれに異なる性格が与えられて首同士でケンカしたりするような関係性が見られるのがもう堪らない。
そしてバトル・シーンはギャレス版を遥かに超えるケレン味と迫力とボリューム感!かつてのゴジラ映画の完全アップデートという感じで、元怪獣少年の心が大興奮した。だって○○○○○・○○○まで出してくれるんだぜ?ヤバいよ・・興奮し過ぎて泣けるよ・・
マイケル・ドハティ監督の演出手腕とこだわりが素晴らしい。

そこに拍車をかけるのがキレた音楽の良さ。伊福部音楽を巧みに最高のタイミングで取り入れつつ、日本要素を意識したのかソイヤッ!ハッ!という謎の掛け声やお経(!)等も入り乱れるカオスな熱量のある楽曲でエッジが効いている。まさかあの曲まで聴けるとは思わなかったので歓喜した。


しかし残念なのが脚本の粗さ。演出や芝居は明らかにギャレス版よりも遥かに良いのに、脚本の拙さや幼さが足を引っ張る。どう考えてもヴェラ・ファーミガとミリー・ボビー・ブラウンの設定を誤っている。この辺りはやはり「ガメラ3 邪神覚醒」が巧かったなと思う。
悪の組織はまぁあんな感じでも良いと思うよ、怪獣映画だし・・でも怪獣への復讐と恨みのドラマになり得たのを『自然との共存』という大義名分の動機で覆い隠した事が、逆に薄っぺらさと登場人物達の馬鹿さに繋がってしまっている。実際彼女はああは言っているものの自分の心に嘘をついていて本心は違うのでは?と思いたいのだけど(その矛盾こそがドラマになりえたのに)、その辺りの描写が足りないのでドラマの流れが上手くいかない。
大量の人間が死ぬ故に、登場人物達への『バカじゃないの?』という憤りの感覚がかなり大きくてそれが歯がゆく辛い。



好きな役者が結構ショッキングな死に方をするので驚いた。今回のドハティ監督は「ブライアン・シンガーのトリック・オア・トリート」や「クランプス」といった小規模な良品ホラーで腕を振るってきた監督(特に「トリック・オア・トリート」のバス落下ショットはもう何年も前に観たのに忘れ難い)なのだけど、毎回人間への残酷さというか無慈悲さが顔をのぞかせる所があって、今回もそのある種の業みたいなものが(今までよりも大規模な形で)発揮されている。それは残念というよりこの監督の作家性だと思っている。


前作からの地続きの話なのでムートーへの言及もあるのだけど、あのモザイクの使い方はとても正しい認識だと思った(笑)ギャレス版への愛情も結構あるのだと思う。


あとは髪を切って男っぽい服を着たチャン・ツィイーがとても綺麗(ところで凄い適当に明かされてたけど、双子設定なの・・?だからモスラ担当・・マジ?)。




脚本で残念な所はあるけれど、怪獣描写の異常なまでの熱量と愛情(あと監督の業)にほだされて、観た後の感覚は不思議と悪くない。
エンドロールのキャスト欄の怪獣達の表記に御注目を。これはもはや狂った愛。そしてエンドロールの最後にこめられたリスペクトにも感嘆。

ネタバレありの感想をちょこっとコメント欄に書きます。
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