けーはち

ババドック 暗闇の魔物のけーはちのレビュー・感想・評価

ババドック 暗闇の魔物(2014年製作の映画)
3.6
最近観た『へレディタリー/継承』でも思ったけど、ホラーの本質としてやはり人間にとって子育て、家族・夫婦の確執、嫁姑 etc. というリアルな普遍的人間関係に潜む「闇/病み」に勝る恐怖はないのだろう。本作の「ババドック」という、子どもの絵本に出てくる珍妙な名前のバケモノはやがて母親の心の闇/病みそのものに同化してしまう。

本作の主人公である母親は、ある事情で息子の出産と同時に夫と死別。息子の誕生日は夫の命日でもあるので誕生日を祝う気になれない。息子は発達障害気味で攻撃的・衝動的な行動が多く、学校・近所・親戚のママ友から指弾される。職場の同僚はセクハラ野郎で、ラブシーンを見せつけてくる奴もいる。ムラムラ来て、独りエッチに励もうとすると、息子がワーッと言って台無しに。そんなストレスの積み重ねがジワジワあって不眠をこじらせ、クスリを飲んで眠ると悪夢にババドックが出現し後半は抑圧してきた憤懣、狂気が爆発。おそるべき怒涛の展開に……。

サイコホラーからモンスターホラーに移り変わった後多少雑に御都合を重ねてはあるものの、心に闇はあってもそれにもまして愛は強いというホラーの惨劇と真っ向から戦う展開は何やかんやでグッと来るし、闇を飼いならして折り合いつけて生きていこう、という結論は悪くない後味を残す。なるほど、いかにも、それが人間。