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駆込み女と駆出し男のTorichockのレビュー・感想・評価

駆込み女と駆出し男(2015年製作の映画)
4.0
「駆込み女と駆出し男」

去年の日本国内2014年の興行成績ベスト3のうち2作品が、個人的には男性卑下を感じされるような、個人的に嫌な映画でした。要するに世の中の風潮に、ケッ!と思っていたわけです。

そんでもって本作は、離縁(離婚)を願う女たちが駆け込む東慶寺での話。物語自体、どうしようもない男たちに嫌な目にあった女たちの変化や成長の話なので、嫌な流れなのかなぁとか思ったし、個人的に日本の歴史モノってノりづらいので、どうかなーとか思っていたんですが、これが全然嫌じゃなかったです。

監督・脚本を担当した原田眞人監督については、本当に知識が無いので分かりませんが、日本アカデミーでは常連組の監督なので、素晴らしい監督さんなのでしょう。

僕が感心したのは、時代考証上の小物からセリフまで隅々に目の行き届いた細かい日本の歴史ディテールが素晴らしいところで、それはもう見ているだけでもぐっと来てしまう画でした。時代劇的なセリフ回しもそれが濃すぎなくて、こっちが耐えられなくなるその一歩手前で現代的なニュアアンスを組み込んでいるのも、見やすい印象を受けました。

大泉洋さんは、本当に底知れないポテンシャルを持っているなぁと感動しました。日本映画の中ではかなり眼を見張るような長回しの中で、落語のように心地良いテンポと間で畳み掛ける長ゼリフにビックリさせながら、しっかりと人に振り回されるコメディアン的な部分で笑わせる演技もあって、本当に振り幅の広い才能豊かな俳優だと感じました。
また、戸田恵梨香はロクでもない映画しか出てない女優だったけど、今回なかなかよかったなぁと思いました。じょごという役柄が彼女に合っていたかどうかは別問題だけど、良かったです。

しかし、本作の白眉はやはり満島ひかりでした。満島ひかりは最高でした、サイコー!
引き眉・お歯黒メイクって、どう考えても現代人にとっては謎のメイクなんですが、彼女は完全に美しかった。そして、お吟さんはかっこよかったです。
初登場の発声を聴いた瞬間から、もう5点満点でした。
この役とこの映画の世界観をバッチリ掴ませる声の演技が素晴らしかった。満島ひかりって声の演技がすごく上手いんだなぁと思いました。
彼女のラストシーンで、"べった、べった、だんだん"の声の出し方と細い腕の出し方で、本当にこの映画を観てよかったなと、心から思える演技を与えてくれました。
しかも、満島ひかり演じるお吟のエピソードが、とても素敵なラブストーリーだったせいか、当初不安に感じた男性卑下なところも気にならなくなったし、その他の男たちも、記号的な扱いをされていなくて、こんなにも違うものなのかと思いました。
この映画に通づる言葉が、きっとこの言葉で集約できると思います。

"粋"

本当に"粋"な作品でした。
少々、編集が強引でわかりづらい点もありましたが、歴史モノでありながら現代にも通づる普遍的な喜劇としても、とても楽しめましたし、大泉洋の底知れない振り幅と、女優・満島ひかりのポテンシャルを感じる素晴らしい作品でした。
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