MasaichiYaguchi

サヨナラの代わりにのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

サヨナラの代わりに(2014年製作の映画)
4.0
充実した日々を送っていたヒロインが難病を発症して人生が暗転するドラマを描いた作品というと、今年のアカデミー賞でジュリアン・ムーアが主演女優賞を受賞した「アリスのままで」が思い浮かぶ。
本作では2度のアカデミー賞に輝くヒラリー・スワンクがALS(筋委縮性側索硬化症)という難病を発症したヒロインを熱演している。
本作と「アリスのままで」には不思議な共通点というか繋がりを感じる。
「アリスのままで」の監督を務めたリチャード・グラッツァーは今年3月にALSで亡くなっていて、そしてアリスも本作のケイトも作品冒頭で描かれた自身の誕生日を境にして難病を発症している。
どちらも単なる偶然だと思うが、両作品共“生きる”意味を心の琴線に触れるドラマで描いている。
本作が「アリスのままで」と異なる点は、ヒロイン・ケイトと彼女を介護する大学生ベックという2人の女性の人間ドラマだということ。
エミー・ロッサム演じるベックはミュージシャンになる夢に挫折し、大学生活も恋愛も中途半端、その鬱憤を晴らすように奔放に生きるベックは、教養も有り、傍目には満ち足りた生活を送るケイトとは真逆と言っていい存在だ。
大ヒットした「最強のふたり」を彷彿させる真逆な関係の2人が、ケイトの難病によって引き起こされたことに向き合っていく中で心を通い合わせ、互いに影響を与え合って変わっていく。
原題は「You’re Not You」。
見せ掛けの自分を止め、本音で語り合うことで本当の自分を取り戻していく彼女たちが美しい。
それでも2人に残された時間は砂時計のように少なくなっていく。
映画は最後に“サヨナラ”の先にあるものを希望と共に我々に届けてくれる。