三鷹

追憶と、踊りながらの三鷹のネタバレレビュー・内容・結末

追憶と、踊りながら(2014年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

これはまた非常にファジーな映画だ。
Bウィショーくんが出るので見たが、そうでなかったら多分…絶対見ない(笑)

人間の間には様々な「壁」がある。
人種の壁・年代の壁・身内と他人の壁・言葉の壁・性の壁・そして性愛の壁。
この映画にはいくつもの壁があったように思う。
不慮の事故で亡くなってしまったカイには母には打ち明けていない秘密があった。自分はゲイだということ、そして恋人がいること。

カイの死で残されたリチャードはロンドンの介護施設で暮らすカイの母親ジュンに会いに行き、カイの代わりにジュンの面倒をみようとする。言葉も通じない相手同志。ジュンはリチャードに心を開かず時折攻撃的でもあった。
けれどリチャードは決して彼女に対して乱暴な態度をとることはしない。穏やかな青年だ。自分が愛したカイの母親とはいえ、面倒を見る約束もしていない。
ちゃんと介護施設に入所してそれなりの静かで困らない生活を彼女はしている。きっと私がリチャードだったらそこで縁は切れると思う。
何故、リチャードはそこまでして彼女を引き取ろうとしたのか。映画を見ながらそればかり疑問だった。愛する人の母親だから?それだけでは理由に乏しすぎる。

反対側のジュンへ向けてみる。最愛の息子が突然いなくなってしまった。住みたくもない異国で夫も息子も失った寂しさと悲しみはいかばかりかと思う。
それを考えてもなお、ジュンのリチャードに対する閉鎖的なスタンスは私には理解できなかった。
いい年してその態度はないだろう、と。自分ならば息子を失った悲しみはさておいて、自分を心配してきてくれる息子の友人の想いに感謝すると思うのだ。
こんな優しい友達がいたなんて、息子の友人でいてくれて有難うと悲しみの中で思う。
そして「お願いだから自分の事はそっとしておいてくれ。あなたはまだ若い。息子を忘れて欲しくはないがあなたのこれからの幸せも大事だから」と言いたい。

恐らく、彼女はとても子供なのだ。
悲しくて駄々をこねている女と彼女をどう扱って良いのか分からない青年。
それを夢物語のように緩く描いた、そんな映画。
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