このレビューはネタバレを含みます
ジャケットの優しい(ちょっと切ない)雰囲気から想像できないくらい重たい話だった。世の中に悲しい物語は少なくないが、その中でも心が痛むランキングではかなりいい線いくと思う。スカンクのあのラストがなければ見たあとしばらく立ち直れなかったかもしれない。
カニンガム家とオズワルド家は母親がいないという点で紙一重。ただしカニンガム家にはシッターがいて、紆余曲折ありながらも将来的にはアーチーと結婚してスカンクたちの良い母親になってくれそう。兄は大人に隠れてタバコを吸ったり性教育の不十分なまま近所の子とセックスしたりするが、少なくともスカンクにはタバコの味を教えないし相手が妊娠すれば責任を取ろうとする。スカンクは同じ年頃の男の子と付き合うけれど、年相応に唇が触れるだけのキスしかしない。
対してオズワルド家はおそらく長女が母親代わりだけが彼女自身も未熟だから上手くできていない。それどころか己の悪いところを妹たちに教え込んでしまっている。次女も(文字通り)母親になる手順を間違えてしまっている上に、セックスの相手にもお腹の子供にも責任感が感じられない。
カニンガム家とバックリー家は病気の子供をどう扱うかで紙一重。カニンガム家はスカンクを大事にしながらも、過剰に子供扱いせず、血糖値の測定も注射も自分でやらせる。アーチーはスカンクの未来を語る。そして時折スカンクが帰ってこないことを心配するが、自己管理ができてさえいれば自由にさせている。
対してバックリー家はリックをどこか子供扱いしていて、親はリックの言葉を遮り代弁しようとする。母親はリックの子供時代を語り、父親は部屋から出てこないリックを無理やり連れ出そうとする。
オズワルド家もバックリー家も、普段から親子関係が歪であったが故に、問題が起きた時に持ち直すことができなかった。カニンガム家は元々適切な親子関係を築けていたために、壊れかけても修復が可能だったのだと思う。
キールナン先生は先生としては良い人だけど、男としてはかなりダメ(笑) でも後で反省してちゃんと謝れる人であるところは良くて、生徒にあれこれ注意する立場として自分を棚に上げた状態にならないところが素晴らしい。スカンクがプチ家出をした後でアーチーに素直に謝って許してもらえたのは、キールナンから学んでいたからかもしれない。