べえさあ

世界から猫が消えたならのべえさあのレビュー・感想・評価

世界から猫が消えたなら(2015年製作の映画)
3.8
「私思うんだ。人間が猫を飼ってるんじゃない。猫が人間の側にいてくれてるのよ。」

※これは猫の生態系での機能について考える話ではありません

医師から余命わずかと告げられた主人公の”僕”(佐藤健)が、悪魔との取引で寿命を1日延ばすことと引き換えに世の中からあらゆるものを消していく。消されていくものは本当に自分と世の中に必要のないものなのだろうか、、。原作は川村元気さんの小説処女作。

人生で辛い経験をした時、”どうして自分だけこんな目に”と悲観的になり視野もどんどん狭まってしまうものですが、この映画を観て改めてもっと感性を豊かにしなければいけないなと思いました。物語の中の”僕”も初めは死に怯え1日寿命を延ばすことに必死でしたが、段々自分の人生への考え方が変わっていきます。

電話がなくなるとしたら自分は最後誰に電話をかけるだろうか。大好きな映画がなくなるとしたら最後に何を観るだろうか。死と向き合わなければいけなくなった時にやっと初めて物事の尊さに気づくのが人間です。そして、病気や死を題材にした作品に触れるたびにそれを教えられ、数日でそれを忘れてしまうのも人間です。なので本作と同じように人生の大切さや儚さについて語っている映画に出会った時は、その時の人生のステップでまたそれを気づかせてくれているんだと思うようにしています。同じテーマの作品がいくつも存在する意義はそこにあると思っています。

余命宣告、ペット・家族の死、恋人・親友との別れ等感動する要素が十分に詰められた作品ですが、音楽とともに作られた優しく清らかな雰囲気がとても好きでした。色々な登場人物との回想シーンが多くてもごちゃごちゃすることなく観れます。佐藤健と宮崎あおいの感情表現も素晴らしく、元恋人という微妙な距離感を自然な演技でうまく表現されていました。

原作を読んだ時はただただしんみりしていましたが、本作では電話や映画が消えてしまうシーンでの映像作品ならではの描写があり観ていて楽しかったです。どちらが良いというわけではなく、原作の方は恋人よりも家族愛のほうにより焦点を当てているように感じます。

人生と死という重いテーマではあるのに、とてもほっこりする感動映画でした。猫ちゃんもかわいいので猫好きの方必見です!