パンケーキレンズ

ベルファスト71のパンケーキレンズのレビュー・感想・評価

ベルファスト71(2014年製作の映画)
4.5
ジャック・オコンネルの逃走劇!
北アイルランド紛争のリアルな実情が、これまたリアルに交錯したりで、主人公が逃走する(=移動する)ことで、それが緻密に重なっていくのが上手かった!

オコンネル君の、軍服が眼福で♪(ダジャレちゃいますw)
ベレー帽が似合いすぎて、もー素敵!(へらへら)

周りが全員敵!っていう、ヒヤヒヤもんなんですけどね、「敵の中にも味方はいる」し「味方の中にも敵はいる」っていう複雑な人物描写が秀逸

ただ
見た目でアイルランド人かイギリス人かってのが分からないんで、歴史的(宗教的)な背景が分からないと「敵か?味方か?」という映画の一番のキモの部分が掴めない可能性があります

ので

観る前に知っておいたらいいよ♪を箇条書きコーナー(いきなりw)

☆英国の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」、つまり北アイルランドはイギリスです(基本w)

☆舞台となるベルファストは、北アイルランドの首都

☆少数派であるカトリック系(アイルランド人)は、多数派のプロテスタント系(イギリス人)から、生活の上でも、政治的にも差別を受け、両者の衝突は次第に激化

☆カトリック系住民と、プロテスタント系住民の居住地域は分かれていた為、教育も別々です、なので、糞尿を投げたり、「カトリックをぶっ殺せ」みたいな、あんな過激な行動や思想をする子供たちがいるのも納得

☆タイトルにもなってる71というのは、「血の日曜日事件」が起きた72年の前年を意味する

☆「血の日曜日事件」とは非武装のデモ市民を、イギリス軍が銃撃、銃殺した事件、紛争の緊張もピークに達する

☆まさに、この映画は、その一触即発な紛争の頂点を見事に再現しているのです


冒頭のおばちゃんたちの「ゴミ箱のフタ、バンバン!」からの住民たちが投石で押しかけて来る、紛争最前線の描写に魅せられる♪

ただ
敵地の中を逃走するアクションとしての側面は意外と弱く、イギリス(自国)であるのに、まるで知らない国に来たみたいな絶体絶命の孤立状態を味わう若者兵士の姿とその恐怖ってのが、この映画で特化されてる所かも

そこに、突然のパブ爆破(テッパン!)

それによって、IRAの中にある穏健派と過激派の確執がさらに表面化したり、味方であるはずのイギリス軍の影の部隊MRFから命を狙われる事になったりと、なかなかヒネリが効いてますね

その、本来は敵同士であるはずのIRAとMRFのトップが密会するとか、その辺の駆け引きがまた、スパイス効いてる☆

肝心のオコンネル君は、爆破の衝撃で、後半ずっと具合悪そうやったんで、ちょっと残念やったんですけどねw

両者の解決の糸口がなかなか見つからない複雑さを最後に見せつけられると同時に、最年少がいつも犠牲になるという、もどかしさも残していきます・・・

多数派であるはずのイギリス兵を中心に、こんな細部まで、しかも100分未満で描き切る濃厚さにやられた!