かささた

デッドプールのかささたのレビュー・感想・評価

デッドプール(2016年製作の映画)
3.8
この映画で特徴的に使われている「第四の壁突破」について考えてみました。
映画の内部から見て普段は「壁になっていることになっている」観客側の空間を専門用語で第四の壁と言うんだそうです。
でも映画「デッドプール」において主人公デッドプールはしばしばこの壁を無いものとして観客に話しかけたり、自分が映画の登場人物であることに自覚的な発言をしたりします。
この手法を専門用語で「第四の壁突破」と言うらしいのですが、今回この映画を観ていて僕はこの第四の壁突破があまり好きでないということに気づきました。
第四の壁を突破すると何がおもしろいのかというと、我々観客が普段は見慣れていて考えもしない映画の中のお約束、定番、ルーチンといったことを外側の眼から見ることによってもう一度考え直そう、といった批評の側面があるからおもしろいのだと思うんです。
けれど基本的にはこの第四の壁突破、ルールの外に出てルールを茶化すタイプの笑いしか生まないので観客はその単調さに飽きてしまうという側面があるんですね。
変な話ですが、ある種の単調さに対する批評として機能していた第四の壁突破がそのうちにそれ自体単調になってしまう危険があるように思うのです。
あとは何でしょうね、昔「ハイフィデリティ」という映画で登場人物のジョン・キューザックが映画の中から話しかけてきた時も思ったのですが、単純に馴れ馴れしいんです。「第四の壁突破してるけど良いよな」と観客に暗に了承を強いているところがあって好感が持てませんでした。
などといろいろ書きましたが「デッドプール」はそれでも面白い映画でした。僕は2回も観てしまいました。
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