かささた

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のかささたのレビュー・感想・評価

3.5
僕は浅野いにおの漫画が苦手でほとんど読んだことが無くて、このアニメーション映画の原作も1ページたりとも読まずに観ましたが面白かったです。
主人公の境遇が作者や読者の望みそのままであるかのような昨今のアニメーションとは全く別の系統から現れた、日本のアニメーションの変異体みたいなアニメーションのように思いました。
都市の上空にずっとあって風景のように見慣れてしまう宇宙船という設定は藤子・F・不二雄の短編からの引用だと思うのですが、その他にも作品世界の下敷きにドラえもんがあり、いろいろと材料は既視感があるものばかりなのに出来上がった映画は全く新しい感触があります。
この宇宙船が何かのメタファーだったりするのでしょうけど、僕はただ「日常をすぐにも反転させそうな非日常」として見ていました。非日常的な宇宙船が日常の風景の中に常にある事で、日常の価値が上がるというか普通の事の何もかもをリアルに感じてしまうんです。
実際物語前半は宇宙船が存在していることを除けば普通の高校生の恋愛や友情や受験の緊張などなどが淡々と描かれています。ところが上空に宇宙船がある事で、そうした日常が俄然リアリティを帯びて感じられるのです。今ここで起こってることは日常でなくただ一度だけの大切な一瞬であるかのように。青春を当事者以外にもつまり僕のような50代のおじさんにも当事者のように感じさせる装置としての宇宙船であるように思いました。
あと音楽が凄い良いんですよ。サウンドトラックが欲しくなってしまう音楽でした。
前編という事なので後編が待ち遠しいです。
かささた

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